私たちは、DVや虐待などの事情がある場合は、「直接照会は不要」とする現在の通知では、「照会をしてもしなくてもよい」と解釈をしてしまう自治体が出てくるので、明確に禁止してほしいと厚生労働省の担当者に申し入れた。

担当者からは、「DVや虐待といった事情があるにもかかわらず、親族に連絡をしてしまうようなことはなくしていきたい」という言葉があったが、具体的にどう通知を見直すのかについては検討中という返事だった。

叔父や伯父、祖父母にも連絡すると言われ諦めた人も

生活に困窮し、福祉事務所に生活保護の相談に行ったが、扶養照会のことを言われたため、申請を諦めたという声も少なくなかった。

2011年、過労により大うつ病になり、同年退職。体が動かないので再就職できず、AVで凌ぐも体調悪化で生活保護相談へ。その際うつ病の事、AV等で自助努力していることを伝えた。職員からは何の聞き取りもされず、ただ、私の両親と父の兄弟、母の兄弟、祖父母に扶養照会する事、医者を変えなければいけない事、引っ越しする事と言われた。両親はリーマンの影響で年収が100万円まで落ち込んでいたので、私の心配をかけるだけでなく両親に恥をかかせてしまうと思い生活保護申請を諦めた。

こうした体験談からは、扶養照会が生活保護の申請を妨げる「水際作戦」に使われている実態がわかる。この点についても、私たちが指摘したところ、厚労省の担当者は「扶養照会を水際作戦のツールとして使うような不適切な事例はなくしていきたい」と語っていた。

絶縁した父の扶養照会でうつ病に

扶養照会をされた親族からは、40件以上の声が寄せられた。扶養照会により、過去のトラウマがよみがえったという声が少なくなかった。

父が生活保護を申請した時に郵便で扶養照会が届きました。私の両親は私が小学生の頃に離婚しています。原因は父のギャンブル依存による多額の借金です。両親の離婚後、私も妹も父とは40年以上会ったことも、養育費を貰った事も1度もありません。母子3人で経済的に苦しく、生活保護も受けていました。大学進学も諦めました。妹と相談して一度福祉事務所に電話しましたが、担当者不在だったので、あとはそのまま無視しておきました。その後、福祉事務所からは連絡はありませんが、つらかった子ども時代を思い出され、また何故、私たちの住所がわかったのかという疑問で嫌な気分になりました。
父親とは絶縁して居住地を知らないはずなのに、役所から文書が届きました。生活保護を受ける事は権利だと思いますが、父親に住所を知られる恐怖から、同居する家族と父親をつなげない為には私は死ぬしかないと思いつめるようになり、結果、うつ病を発症しました。親は選べない中でも子供は自分の人生を必死で生きようとしています。市からの文書で、絶望感で死ぬ事ばかり考えるようになりました。扶養照会で生活が一変します。無くしてほしいです。

これらの声から、扶養照会により親族の側も精神的苦痛を強いられている実態が明らかになっている。