産炭国のドイツでさえ全廃する「石炭火力」に依存

焦点の一つであった原発は比率が据え置かれた。大手電力が望む原発の新増設やリプレース(建て替え)は盛り込まれなかった。

原案の22~24%を確保するには電力会社から稼働に向けた申請があった27基すべての原発のフル稼働が必要になる。事故後に稼働したのは10基にとどまる。稼働には原発が立地する自治体の同意が必要だ。しかし、不祥事が相次ぐ東京電力ホールディングス柏崎刈羽原発は同意のめどが立っていないなど、先行きは不透明だ。

さらに難しいのが、海外勢から厳しい視線が注がれる火力発電だ。比率は大きく減らし41%としたが、そのうち、石炭火力は19%も残る。石炭は安価で保管もしやすいが二酸化炭素(CO2)排出量は液化天然ガス(LNG)火力の倍にもなる。フランスは22年、英国は24年までに国内の石炭火力を廃止する方針を表明、産炭国のドイツでさえ38年までに全廃する目標を掲げている。

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再生エネ普及のための負担をだれがどう持つのか

このエネルギー基本計画について、大手電力からは「今後、どう投資・事業計画を立てていいのかわからなくなった」との声が相次いでいる。原発に関しては「依存度を可能な限り低減する」として、新増設・リプレースに関する記載が盛り込まれなかったため、日立製作所などが計画している新型の小型炉について「日本での導入は難しくなった」との見方が強い。

火力発電にも問題が多い。大手電力各社は政府の脱炭素政策を受けてLNG火力への転換を急いでいる。石炭火力の削減を押し付けながら、基本計画では2割も石炭火力を残すという内容に、その真意を測りかねている。「再生エネのバックアップ電源として石炭火力を使うということであれば、投資家や環境団体などからの反発にどう対応すればいいのか」(大手電力幹部)との不満が漏れる。

さらに問題となるのが、再生エネ普及のための負担をだれがどう持つのかという点だ。

基本計画では家庭や工場などで30年に累計2400万キロワット時の蓄電池の導入を見込んでいる。19年度までの累計の導入量の約10倍にも相当する規模だ。経産省は蓄電池の1キロワット時あたりのコストが産業用では19年度の24万円から30年度に6万円に、家庭向けでは19万円弱から7万円程度に下がるとみている。投資額について最も安い価格で試算すると少なくとも1.3兆円かかるとしているが、実際に価格が下がるかどうか判然としない。