G20で初の「気候変動とエネルギーの合同閣僚会議」
「中国やロシア、インドに救われた」。7月23日にイタリア・ナポリで開かれた主要20カ国・地域(G20)気候・エネルギー相会合。会合の様子を注視していた環境省の幹部たちはほっと肩をなでおろした。
この会合で先進国は石炭火力発電の縮小や産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えることを求めていたが、中国やロシアなど新興国が反発、「努力目標」とすることを強く訴えた。閉幕直後に予定した共同声明の公表は文言の調整に時間がかかり遅れるなど、先進国と新興国との対立が改めて浮き彫りになった。
G20で気候変動とエネルギーの合同閣僚会議を開くのは初めてだ。G20のうち日米英など7カ国(G7)は6月の首脳会議で、2050年までの温暖化ガス排出の実質ゼロや気温上昇を1.5度以内に抑えること、さらには石炭火力輸出への新規支援の年内停止で合意した。今回のG20閣僚会合はG7から合意への対象をG20に広げて10月末からのCOP26へ弾みをつける場とする狙いだったが先行きは不透明になった。
「日本がまた名指しで批判されることは避けたい」
日本からは小泉進次郎環境相が出席した。環境省にとっては19年のCOP25の会合で石炭火力への取り組みが遅れる日本に対し、各国から集中砲火を浴びただけに、特に環境省は「日本がまた名指しで批判されることは避けたい」との思いがあった。
この会合の直前の20~21日にオンライン形式で開かれたG7気候・環境相会合では英BBCが「英政府は日本が11月の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)までに態度を変えることを期待している」と伝えるなど、20年代中に石炭火力の全廃に踏み切る英国やフランス、イタリアに比べ、スピードが遅い日本への風当たりは厳しい。
幸いG20で日本が再び名指しで批判されることはなかった。ただ、小泉環境相の難題は残る。このG7会合の初日に示された日本の「エネルギー基本計画」の実現だ。国内では「数字合わせの計画」「実現可能性が低い空論」との批判が相次いでいるからだ。