月額1台約30万円、三菱地所や成田国際空港が採用
あらかじめ施設内の巡回ポイントを設定しておくと、誰かが操縦するのではなく、SQ-2が自分で障害物をよけながら最適なルートを判断して巡回する。「自律移動型ロボット」と呼ばれる所以である。バッテリー残量が少なくなると、家庭用のロボット掃除機のように、自分でドックに帰還して充電する。
人間の警備員は防災センターに待機して、SQ-2から送られてくる情報をチェックする。SQ-2はスピーカーとマイクを搭載しており、防災センターにいる警備員がリモートで、SQ-2のいる現場の人と会話することも可能だ。
商用としての運用開始は2019年8月で、三菱地所が東京大手町の超高層ビルにSQ-2を導入した。2020年2月には、NAA(成田国際空港)が第3ターミナルで、SQ-2を採用した。利用月額は1台約30万円である。NAAは「警備ロボットの導入にあたり、ロボットが占める足回りの面積が小さく、人込みや狭い通路等での機動性が高い点を評価した」と述べた上で、「人とロボットの力を融合させた、より高度で効率的な館内警備を実現する」と、SQ-2に期待する。
狭い通路やオフィスで自律移動できるロボットは希少
そもそも自律移動という技術自体は、以前から研究されてきた。例えば工場内に引かれた白線を目印にロボットが移動する技術は、すでに実用化されている。自動車では、高速道路などの限定された区間内では自動運転が実用化の段階に入っている。
しかし一般道を含む完全な自動運転の実用化はまだ遠いのが現状だ。それと同じで、ロボットのために特別に整備されてはいない環境の中で、自律移動を実現しているロボットは、海外を含めてまだ数少ない。しかも狭い通路やオフィスで、通行する人たちをよけながら自律移動できるロボットとなると、ほとんど他に見当たらない。だからこそ、日本を代表する企業が、SQ-2を導入しているのだ。
不審者や不審物の対応については、やはり人間の判断が求められる。何が「不審」なのかを判断する機能はまだ、SQ-2に搭載されていないからだ。しかし「本来は誰もいない場所や時間に誰かいたり、何かあったりしたら防災センターに知らせるという決まりを作ることで、対処は可能」と、シークセンス代表を務める中村壮一郎は言う。「いまは人間が判断してやっていますが、必要性の優先順位をつけて、AIのチームがしっかりと作り込んでいくよう、準備を進めています」