コシェル認証を獲得している「南部美人」

ただ、コシェルとハラールには内容の面で大きな違いがある。はっきりしているのは、イスラム教では酒が禁じられているが、ユダヤ教では禁じられていないことである。ユダヤ教徒は酒を飲むのである。

したがって、日本の酒造メーカーのなかには、コシェル認証を取得しているところがある。

その一つ、岩手県の株式会社南部美人のホームページを見てみると、コシェル認証について説明している箇所がある(そこでは、コーシャ)。

南部美人の久慈浩介社長によれば、「ユダヤ教のラビ(教師)が酒蔵を訪問し、お酒の製造方法や道具などを細かくチェックしていましたね。道具を洗う洗剤もチェックの対象でした。抜き打ちでラビが訪問することもありました」ということだ。そこには、黒い帽子を被り、あごひげを長く伸ばしたラビが酒蔵を訪れたときの写真も掲載されている。

オーガニック主義者やベジタリアンにも支持される

ただ、ユダヤ人の数はそれほど多いわけではない。世界中で1400~1500万人程度と推定されている。そのうち、イスラエルに600万人以上が住み、アメリカには550万人程度が生活している。

島田裕巳『宗教別おもてなしマニュアル』(中公新書ラクレ)

その程度の数では、コシェル認証を取得しても商売として多くの利益を生まないように思われるかもしれない。

だが、久慈社長によれば、「『コーシャ認定』を受けた食品は、“安心”のイメージが高く、ユダヤ教徒の方々以外にも、オーガニック主義者やベジタリアン、アレルギー体質の方々からも支持を得て」いるという。そこにブランド価値があるのだ。

『日本経済新聞』電子版の2019年3月1日付の記事には、「『ユダヤ認証』で食品輸出増やせ 『コーシャ』取得じわり」というものがある。これは、南部美人を含め東北の企業について扱った記事である(コシェルについては、『食文化誌 ヴェスタ』の細田和江「信仰と習慣のあいだ イスラエルのコシェルの今」を参考にした)。

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