断食月が終わると大祭が待っている
さらに、断食月が終わると、「イード・アル・フィトル」ないしは「レバラン」と呼ばれる断食明けの大祭が待っている。国によっては、これが連休になり、ちょうど日本の盆や正月のような状態になる。
日本では、どの地域でも、さまざまな祭りが行われているが、イスラム教が広がった地域では、祭りの機会は少ない。
その代わりに、断食月が祭りに近いものとなっていて、大いに盛り上がる。日中は空腹で仕事にならないといったこともあるようだが、イスラム教徒は断食月を楽しみにしている。苦行とは正反対なのだ。
日本政府も、1日だけだが、イスラム諸国の駐日大使を総理大臣官邸に招いて、イフタールを行っている。主催は総理大臣か外務大臣で、2005年から続けられている。
断食は、乳幼児やその母親、妊娠中の女性には免除される。旅行者にも免除されるが、戻ってきたら、別の日に断食することが奨められている。
旅行者に断食が免除されるということなら、断食月に日本を訪れるイスラム教徒は、滞在中はその必要がないということになる。
だが、それがイスラム教徒にとっての大きな喜びであるならば、たとえ旅行中でも、同じ信仰を持つ仲間と断食を行い、イフタールを楽しんだ方がいい。最近では、旅行中でも断食をするイスラム教徒が増えている(椿原敦子・黒田賢治『「サトコとナダ」から考えるイスラム入門 ムスリムの生活・文化・歴史』星海社新書)。
食事や水を飲む様子を見せない配慮は必要
したがって、日本でも、断食をするイスラム教徒と出会う可能性がある。その際には、イスラム教における断食がどのようなものなのかを理解しておく必要がある。まず何より、その姿勢を尊重しなければならない。食事をしている様子や水を飲むところを見せないなどの配慮は最低限要る。
ただ、断食については、私たち日本人の側が、断食期間中のイスラム教の国を訪れたときの方が問題になる。
外務省はホームページに、「ラマダン期間中の注意喚起」を載せているので、もしそうした機会に遭遇するなら、それを読んでおいた方がいい。街中の人たちが一斉に断食を行っているわけだから、その影響はさまざまな形で表れる。
最近では、ヨーロッパに移民するイスラム教徒が多い。西欧や北欧では、軒並み、イスラム教徒の人口が5パーセントを超えている。フランスなど8.8パーセントにもなる(“5 facts about the Muslim population in Europe”, Pew Research Center, November 29, 2017)。
北欧では、北に行けば行くほど、夏には白夜が続く。北欧のイスラム教徒が、日の出から日没まで断食しようとしたら、あまりに長時間になってしまう。そもそも、日の出も日没もないので、断食をいつはじめ、いつ終えていいのかが分からない。
これについては、サウジアラビアの時刻に合わせる形で解決がはかられている。