森は堀の弱点を見抜き、欠陥を修復していく。それはフェードを打たせることに他ならない。フェードならボールをハードヒットしやすい。上から叩きつける「枕落とし打法」実現できるのだ。

森は「元々フェード打ちだよ」と堀に暗示だけをかける。しかし、徐々にその意味がわかってくると、自ら打とうする。強制でなく自主的に変えることこそがスランプからの脱出になることを森は知っているのだ。

2021年、堀はフェードに切り替えた。すると開幕戦のダイキンオーキッドレディスで久々に予選を通過、次の明治安田生命レディスで8位タイとベストテン入りを果たしてしまったのだ。

「フェードにしてからさらにボールがしっかり打てるようになったんです。飛距離も出るようになって方向も良くなって。この試合でフェードで行く決心がつきました」

復活に導いた“ボギーをたたかないゴルフ”

気持ちが固まるや、3試合目のKTT杯バンデリンレディスでは6位タイに食い込むことができた。大会前にはフェード打ちの有村智恵からティグラウンドでの立ち位置やグリーンの攻め方など細かくアドバイスをもらった。

森からは「いつでも100%を出そうと思わず、50%でパーが取れるゴルフをしなさい」と言われる。全力投球が必ずしも好結果を生むとは限らないゴルフの奥深さを堀に教え込んだのだ。

この教えでショットが不調でもパーが取れるようになっていく。6月のニチレイレディスで10位タイ、次のアースモンダミンカップで4位タイに入ると、いよいよ優勝への手応えをつかんだ。

「それまでの私はバーディも取るけどボギーも叩くという荒れたゴルフでした。でも、50%ゴルフを覚えていくうちにボギーを叩かないパーを基準としたゴルフができるようになってきたのです」

堀は笑顔でそう言い切った。ショットが悪いときにアプローチの練習をした成果も実って、「ボギーを叩かないゴルフ」は底知れない自信となって現れる。それが7月のニッポンハムレディスクラシックの大会だった。

安定したショット、自然とこぼれる笑顔

この大会で堀は自分のフェードボールに一層の自信を深めた。

4日間を通じてフェアウェイキープ率83.9%、パーオン率73.6%とドライバーもアイアンも好調だった。ショットメーカーと言われた頃の思い切り良いスイングが復活した。

この結果、初日は6バーディ・1ボギー、2日目2バーディ・2ボギー、3日目4バーディ・ノーボギー、最終日の4日目は5バーディ・ノーボギーである。ボギーは2日目の17番からプレーオフまで、41ホール連続で叩かなかったのである。