「女性はメイクしないと失礼」と教えるマナー講師もいた

大学によっては就活対策の先生としてマナー講師を招くところもあり、その中には「女性は面接ではメイクしていないと失礼」などと教える人もいました。大学の正規の授業に、偏ったジェンダー意識が持ち込まれたわけです。就活の服装やマナーにおける就活セクシズムが加速した原因としては、僕はこれが決定的だったと思っています。

「男らしい」「女らしい」という言葉そのものは褒め言葉にもなりえますが、就活で企業から評価されるためにそう見せる、しかもそれを教えるということになると、男はこうあるべき、女はこうあるべきと細かくマニュアル化されてしまいがちです。

こうしたことを授業で、先生と呼ばれる人から教えられたら、多くの学生は正しいと思い込んでしまうでしょう。企業から選ばれたいと願う学生の気持ちを責めることはできません。問題は、そう教えてしまう「先生」の側にあるのです。

企業が求める個性とは「自社に合った個性」

もうひとつ、就活セクシズムが加速した原因としては、従来からの企業の新卒一括採用も挙げられます。海外の企業は、インターン制度を使って人柄や会社との相性などを見極めた上で採用することも多いのですが、日本のような一括採用では一人ひとりの人柄までチェックできません。自然と、出身大学などの経歴に頼る割合が多くなります。

採用の判断材料が経歴しかない中で、同じような経歴の学生をふるいにかけようと思ったら、後は見た目が頼りになってしまいます。極端な例で言えば、面接にTシャツ姿で来る子よりは、リクルートスーツの子のほうが常識的でいいよね、ということですね。

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最近は「面接は個性を発揮する場」などとも言われますが、そうは言っても企業が求める個性とは「自社に合った個性」。真に個性的な人を求めているわけではありません。そんな人を入れたら自社の枠にはまった働き方をしてくれないかもしれず、現状うまくいっている組織が変わってしまう可能性もあるからです。

また、就活生は皆同じ見た目であるほうが逆に選びやすいと考える人もいます。見た目が均一化していれば残る材料は経歴だけになりますから、合否も割り切って判断しやすいというわけです。

加えて、日本の企業はまだ性的マイノリティーの就活生を想定する段階まで行っていません。服装もマナーも、いまだに男性は男性らしい、女性は女性らしいことが常識的とされていて、履歴書に性別を書かせない企業がニュースになるぐらいです。