ただし、一般市民からは国軍による自作自演だという声があり、こちらのほうが真実味がある。とにかく、大多数のミャンマー人が中国政府や企業、中国人を嫌っているのは間違いない。

一部の華僑がミャンマーの富を独占している

ミャンマー人が中国人を嫌う理由の一つに、一部の華僑がミャンマー経済の多くを独占していることにもある。国民の90%を敬虔な仏教徒が占めるミャンマー人は、穏やかで金儲けや商売が苦手な人が多い。そんなミャンマーではいつの間にか一部の華僑が経済の実権を握るようになってしまった。

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彼ら華僑は祖父母以前の代に中国から移民してきた。必ずしも中国共産党の支持者だというわけではないし、嫌中の人も多い。私が以前、華僑のビジネスパーソンと会食した際に「永杉さん、我々華僑が一番嫌う民族は誰だか分かりますか。それは文化大革命以降の中国共産党の中国人なのです」と、はっきり言われた。

ただ彼らは中国語が話せるので、中国相手に商売ができるという利点があるのだ。しかしミャンマー人にとっては華僑も中国共産党も同じように感じ、中国を嫌っている人が多い。さらにミャンマーが抱える少数民族問題を中国が利用してきた歴史もある。

中国と国境を接するミャンマー北部の山岳地帯に住むカチン族やシャン族は、中央政府からの分離独立運動を続けているが、それを後方から中国が武器や弾薬などで支援していると言われる。独立後も続く少数民族問題を中国が利用し、複雑にさせていることも中国への反感を強くする一因となっているのだ。

中国との発電事業では現地住民とトラブルに

また、中国との共同開発事業では、強引な開発や深刻な環境被害、住民とのトラブルを引き起こし、大きくニュースで取り上げられてきた。

民政移管前、軍事政権時代の2009年12月にミャンマー電力省と中国電力投資集団公司が開発に合意し、プロジェクトがスタートしたのがミッソン水力発電ダムだ。

ミャンマー北部カチン州ミッソンにあるエーヤワディー川の源流になる地点に総工費36億ドル(約4000億円)をかけたダム建設が計画される。ダムの高さは152m、発電能力6000メガワットの水力発電を予定。700キロ平方メートルを超える面積のダム湖ができることによって、60の村が水没するとされていた。