これは住民に対する攻撃であり、デモ隊に重火器を使った国際法に違反する重大な犯罪行為であった。2014年には警察の発砲で数人の負傷者以外に、女性1人が死亡した。中国がミャンマーで進める事業の多くは国軍系企業と合弁を組み進めていくが、住民を無視した強引な開発や、時には反対デモの参加者に武力を使ってまで鎮圧する。特に習近平政権以降は途上国の人々に対して居丈高な態度で接することが多い。
何より資源を中国に持ち去ろうとする意図があからさまに見えてしまう。現地の住民はもちろん、ミャンマーの人々の反発を招くのは当然であろう。
ミャンマーの危機は日本の危機でもある
同じように中国から多額の投資を受けて開発を進めたスリランカでは2017年、巨額の債務のためにハンバントタ港の運営権を中国に奪われ、99年間の中国の租借地となった。
このような事態を警戒したミャンマー政府は、借金をせず事業費を圧縮する方向に計画変更を図ったのだ。しかし現在、国軍によるクーデターにより欧米諸国からの非難を受け、ミャンマーは経済的に再び中国寄りに舵を切り始めている。事実、5月7日には中国からの25億ドル(約2700億円)もの液化天然ガス発電事業を認可している。
また、チャウピュー港は深海港で、大型の軍艦などの寄港も可能になるとみられる。すでにスリランカのハンバントタ港を租借地とした中国が、チャウピュー港の実権まで握ったならば、インド洋の覇権を中国に握られる可能性が大きくなり、世界情勢は不安定化する。
中東からの石油をインド洋からマラッカ海峡を通過する海上輸送に依存している日本にとっても、文字通り致命的なエネルギー危機となり得るのだ。石油や天然ガスなどのエネルギーや海上輸送を、マラッカ海峡や南シナ海に依存しなくなった中国が、その海域を封鎖することで日本や台湾などに圧力をかけることも容易に想像できる。
もしミャンマーが中国にチャウピュー港の実行支配を容認するならば、日本の生命線であるエネルギー輸送で、まさにのど元に刃を突き付けられたような危機に直面するのだ。今回のクーデターに乗じて一気に進められる可能性のある中国の野望を、日本は諸外国とともに協力して、何としても阻止しなければならない。