政治には「手続的正義」がきちんと成立している必要がある

「手続的正義」を考える上で参考になる事例が、2020年11月1日に行われた大阪都構想の住民投票(大阪市廃止・特別区設置住民投票)です。結果は、反対が約69万3000票、賛成が約67万6000票で、約1万7000票の僅差で反対票が上回りました。パーセントで表すと、反対50.6%、賛成49.4%。大まかに言えば、「51対49」です。

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2020年11月のアメリカ大統領選挙も接戦で、多くの選挙区で51対49の結果でした。選挙の結果に不満を持ったドナルド・トランプ氏の支持者が抗議活動を行い、ワシントンの連邦議会議事堂へ突入する騒ぎとなったのは、皆さんご存知の通りです。

大阪都構想もアメリカ大統領選挙の結果も、51対49の僅差ですから、「絶対的に51のほうが正しい」という結果ではありません。しかし、政治を動かしていくには、51の結果を正しいとみなしてもらい、49の案を支持する人たちにも、ある程度納得してもらわなければなりません。したがって、厳格に定められたルール・プロセスに従った結果であること、すなわち「手続的正義」がきちんと成立している必要があります。

多数決の結果を認めさせるための「厳格なプロセス」

僕は、2020年のアメリカ大統領選挙が紛糾したのは、手続的正義がしっかりしていなかったことが問題だと見ています。

橋下徹『決断力 誰もが納得する結論の導き方』(PHP新書)

今回の大統領選挙は、新型コロナウイルスの感染が広がる中での選挙でした。そのため、郵便投票システムが大規模に導入されました。僕は当時、この郵便投票システムが適切な選挙プロセスと言えるのか、疑問を抱いていました。本当に不正があったかどうかは別として、選挙結果を決めるプロセスとしてずさんさを感じたからです。

たとえば接戦となったジョージア州では、当初、バイデン氏が約1万3000票差でトランプ氏に勝利したと報道されました。ところがその後、約5800票の未集計票があったと報道されています。仮に5800票すべてがトランプ氏の得票だったとしても、勝敗はひっくり返りません。

「結果は変わらないのだから、多少の未集計は問題ない」という考え方もあるかもしれません。しかし、日本の選挙の感覚からすれば、5800票もの未集計票というのは信じられない数です。適切なプロセスを重視する手続的正義の考え方からは、5800票も未集計票が出てくるアメリカの郵便投票システムには許容できないずさんさを感じます。生きるか死ぬかの壮絶な選挙戦を戦っている当事者からすると納得できるものではありません。

日本の選挙制度では、選挙管理委員会が有権者に投票用紙を配布した数と投票箱から回収した数を一票単位で合わせる厳格なシステムを採用しています。このような厳格なプロセスを踏まえた投票ですから、日本では、投票結果が仮に一票差であっても、票数が上回ったほうを「正しい」とみなすことができます。「有権者の多くが納得できるプロセス」を踏んだからです。

多数決の結果を認めさせるには、結果に至るプロセスが適切なものでなければなりません。そのための仕組み作りこそ、リーダーが率先して行うべきことなのです。

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