多数決で少数派を納得させるにはどうすればいいのか。元大阪市長の橋下徹氏は「結果に至るプロセスを適切にすればいい。司法の『手続的正義』という考え方が参考になる」という――。

※本稿は、橋下徹『決断力 誰もが納得する結論の導き方』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

元大阪市長の橋下徹氏
撮影=的野弘路
元大阪市長の橋下徹氏

答えがないからこそ「意思決定までのプロセス」を重視せよ

世の中には、何が正解かわからないことがたくさんあります。政治でもビジネスでも、わからないことだらけです。先の見えない中で「こちらに向かうべきだ」と決断し、組織やチームを動かすこと。誰もが決められない問題について意思決定を行い、責任を取ることがリーダーの役割です。

ところが、今の国会議員たちを見ていると、「正解は何か」という議論ばかりをしています。「自分の意見は絶対に正しい」「いや、そっちのほうが間違っている」と。国会議員だけではありません。自治体の長や地方議員などの政治家や企業、組織のリーダー・責任者も「何が絶対的な正解か」を議論しすぎて、ドツボにはまっていることが多々あります。

正解がわからないことについて議論を延々と続けたら、永遠に決断ができない。これではリーダー失格です。では、どうやって決断したらいいのか。それは、「組織やチームが納得するプロセスを踏むこと」です。

日本は成熟した国ですから、国民の教育レベルが高く、価値観も多様です。その中で、「これが正解」と全員が合意することは、そもそも難しい。日本のように成熟した民主主義の国で、指導者層が国民や組織のメンバーの納得を無視した判断をし続ければ、やがて彼ら彼女らの反発を受けて支持を失ってしまいます。

だから、リーダーは「こちらの案にする」と決めたとき、選ばなかったほうの案を主張した人たちにも、自分の決断に納得してもらう必要があります。組織やチームのメンバーの納得感が薄ければ、その後も物事は前に進まない。だからこそ、「組織やチームの人間が納得するプロセス」を踏むことが必要です。

そうしたプロセスを踏んだ上で決めれば、もともと決定案に反対していた人たちも「これだけのプロセスを踏んだのだから仕方がない」と納得してくれます。