日本兵の「尻叩き」ができる貯金箱を販売

軒先に干されている唐辛子やトウモロコシの模型は精巧で、近づいてよく見ないと本物と区別がつかないほど。あちこちに見える「反対帝国主義侵略中国」や「軍民合作抗戦勝利」といったスローガンも、すべて懐かしい繁体字である。

著者撮影
山積みされた、カボチャとジャガイモとトウモコロシの模型。明らかにスペースの無駄づかいである

中国の遊園地ということばで連想されがちな、ニセモノ・ハリボテ感はまったくない。むしろ、当時の雰囲気をできるだけ壊さないようにという強いこだわりを感じた。建物はそれぞれ喫茶店や食堂などになっており、実際に利用することも可能。病院の建物に本物の救護室をおくなど、なかなか洒落しゃれている。

そんなことを考えながら、「八路村」の土産物屋に入ってみた。昔の照明を再現しているため、なかはやや薄暗い。

棚には、お尻をむき出しにして地面に這いつくばる、涙目の日本兵をかたどった貯金箱が陳列されていた。金棒が付属しており、「尻叩き」ができるという仕掛けだった。観光客たちが何度も遊んだのだろう、お尻の部分はすでに黒ずんでいた。いかにもわかりやすい土産である。

ただそのいっぽうで、進歩の兆しも見られた。「当園のオリジナル・キャラクターです」と店員が紹介してくれた人形だ。八路軍の兵士が可愛くデフォルメされており、まるで「ゆるキャラ」のよう。反日とキャラクタービジネスの融合。これにうまく成功すれば、同園のミッキーマウスが誕生するかもしれない。

繁忙期には1日1000人が来場する

「八路村」を出て、五星紅旗が翻える中央広場を通り過ぎ、同園のさらに奥へと進むと、軍事訓練を模したアスレチック、映画館、劇場、そしていよいよアトラクションのエリアが見えてくる。

思えば遠くへきたものだ。こんな僻地へきちまで足を運んだ日本人はほかにいるのだろうか。アトラクション担当の若い女性従業員に訊ねてみた。

彼女は、「外国人では、日本人とオランダ人が来ました」と応え、そして逆に筆者の国籍を問うた。どうしてそんな質問をするのか疑問に思ったのだろう。日本人だと伝えると、彼女は近くにいた別の女性従業員と目配せし、やや吹き出しそうな顔になってこう付け加えた。「とくに、何度も来ている日本人がいますね」

どうやら日本人の常連客が、「変わった外国人」として従業員のあいだで話題になっているらしい。筆者に対する笑みも、「また変わったやつがきた」という意味のようだ。そこに反日的な雰囲気はまったくなかった。

さらに質問を投げかけるといろいろ教えてくれた。「この前、河南省から来たひとがいましたが、大部分のお客さんは山西省内からですね。30代から40代の家族連れが多いです」。

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東洋風の八路軍太行記念館。屋根一面にびっしりと赤旗が立ち並ぶ

また、隣接する「八路軍太行記念館」とセットで訪れるのが一般的で、繁忙期は春節がある2月と、国慶節がある10月。多いときで1日1000人ほどが訪れるという。