中国では書籍の朗読で月収数千万円も
himalayaは中国で2億5000万人の月間利用者(アプリやIoT機器、車載デバイス等も含めたサービス全体)を持つ、中国最大の音声プラットフォームだ。
安陽CEOは「中国と比べると日本市場はまだまだスタートアップレベル。himalayaは著名人の配信も一般人の配信も、ニュースも経済番組も、ASMR(咀嚼音など聞き心地の良い音)もPodcastもオーディオブックも、『ここに来ればなんでもある』という総合音声プラットフォームとして、あえて色を決めずにやっていきたい」と話す。
himalayaの中国音声市場での姿は、日本の音声メディアの参考になるだろう。
中国市場でのhimalayaのマネタイズの大きな柱が、本を音声で聞くオーディオブックだ。中国ではオーディオブックの人気が非常に高い。そのためhimalayaでは多くの本の版権を抑え、その本を、アナウンサーや声優志望の人に朗読させ、ユーザーにそのオーディオブックを買ってもらって、利益を分け合う仕組みを作っている。
いまでは、本の朗読専門の「朗読者」とでもいうような職業まで誕生し、中にはそれだけで月に数千万円(!)稼ぐ人もいるという。また農家だった人が配信で人気となって、夢だった本物のアナウンサーになるというシンデレラストーリーも生まれた。
中国では音声配信を職業として、食べていける人がかなりいるということだ。
しゃべるだけで食べていける未来
himalayaの配信者のように、日本においても「しゃべることで食べていける人」を作ろうとしているのがRadiotalkだ。Radiotalkを立ち上げた井上佳央里さんは、YouTuberが職業となったように、Radiotalker(ラジオトーカー)という職業を作りたいと考えている。
井上さんによると、音声配信は、動画配信とは違い、顔を出さないので配信の心理的ハードルが低く、容姿の良しあしも関係ない。話す力があれば食べていけるという。なにより井上さんは、「声」にはその人そのものを届ける力があり、「声」だけの配信だからこそファンを作りやすいと考えている。
「しゃべる」職業のマネタイズのベースになるのが、Radiotalkでは、ライブの音声配信でリスナーがくれるギフティング(投げ銭)だ。
実際、Radiotalkの配信で「食べていける」例も増えてきた。たとえば、無名の必ずしも若いとはいえない音楽家が、5分で30万円のギフティングを稼いだり、ギフトを集めてリアルイベントとして音楽ホールでのコンサートを開いたりしたこともあったという。
Radiotalkの井上さんは、「私たちは音声配信で『消費される情報』ではなく、『人』を届けたい。いまはスターの在り方が変わってきて、求められているのは自分にとってのスター。配信者に課金する顧客をリアルの知人から集めて『がんばって20人程度』の人でも、Radiotalkなら100人、200人と拡大できるうえに、1人数万円の熱量にまでファンの熱狂度が高まっていく。マスメディアと張り合う必要がないし、グローバルのニッチを集めればさらに1000人、1万人と広がるポテンシャルがある」と話す。それなら十分に食べていけるということだ。
配信者を「好き」になりやすい特性から、別の形でマネタイズできることもある。Voicyでは配信からグッズ販売につなげたり、サブスクリプションのオンラインサロンにつなげたりする配信者が少なくないという。
Voicyの創業者・緒方憲太郎さんによると、Voicyとオンラインサロンの両方をやっている人では、オンラインサロンのメンバーの80%以上がVoicy経由の流入だという。