音声配信者という「ブルーポンド」

インターネットが世界中に広がり、テキストからはブロガー、動画からはYouTuberが生まれた。それに今後、Radiotalkの井上さんが目指すような、音声から職業が生まれるかどうか。

筆者はかなり可能性が高いと考えている。その理由は、音声配信者が「ブルーポンド」を持つ存在だからだ。

ブルーポンドとは、競合が少ない市場のことを意味する「ブルーオーシャン」という概念から筆者が翻案したもので、競合のいない小さな市場のことを指す。

ブルーオーシャンでも規模が大きすぎる。気づいた強者がすぐに参入してレッドオーシャン化する。さらに小さな「ポンド(池)」にこそ、持続可能な成功モデルがあるというのが筆者の考えだ。

ビジネスでいうと、ブルーポンドを押さえた会社は、そのブルーポンドで顧客との結びつきを強めることで、競合の参入をはばみ、ブルーポンドでずっと利益を上げ続けることができる。

井上さんの目指す職業としての音声配信者は、少ないながらも結びつきの強いファンを持ち、そのコミュニティを保ち続けることで、食べていくイメージだ。

もちろん、声としゃべりだけで食べていくには、配信者自身とその声の魅力、しゃべる技術や企画力によるところは大きいだろうが、「しゃべる」職業でブルーポンドを目指すやり方は、マネタイズのあり方としては成立する可能性が高いだろう。

北海道美瑛町の白金青い池や青池の美しい風景
写真=iStock.com/structuresxx
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すべてが「音声」で済む世界へ

「音声」というフロンティアをめぐり、音声メディアのキープレイヤーたちに取材を進めるうち、筆者にも彼らが見据える未来がはっきり理解できた。それは、音声認識技術がさらに進化し、スマホなどのデバイスがすべて音声入力で操作される近未来だ。

近年、Googleなどの音声認識技術の進歩がすさまじい。技術の進歩に合わせて利用者がますます増え、さらにデータ蓄積が進んで、また精度が上がるという好循環が生まれているのだろう。

音声入力は、キーボードを叩くより、文字入力がはるかに早いという優位性もある。このまま進めば、デバイスとのやりとりが、人としゃべるくらい自然なものとなり、操作がすべて音声で済ませられる未来はそう遠くないだろう。

そうなると、スマホなどの画面を見て、Facebookにテキストを書き込んだり、人の投稿を読んだりという、画面を通じて行っている行動が、音声で入力し、音声で聞くという画面を必要としないものになっていくはずだ。

メールやメッセンジャーなどの内容をAIが解析して、その人にとって重要なものから聞かせてくれるようになるかもしれない。社長への連絡や行動予定を、かたわらで読み上げる秘書のように、スマホが進化するのだ。