デジタル音声広告は精度の高いターゲティングが可能

そんなデジタル音声広告で日本の音声市場を切り開こうとしているのが、19年からデジタル音声広告事業を始めた「オトナル」だ。

社長の八木太亮さんは「2年前はデジタル音声広告って何? ラジオじゃないの? という世間の認識で、どんな会社が買ってくれるかも、売り方もわからない状況だった」と話す。そんなところから八木さんは、デジタル音声広告というものを“布教”しながら、アドテクノロジーを活用して音声メディアに実装するという、広告代理店とメディア開発という二役をこなしてきた。

筆者は今後、音声広告の主流は、ラジオ広告からデジタル音声広告に移るだろうと考えている。その理由は、ラジオ広告とデジタル音声広告の特性の違いにある。

筆者はInterFMでラジオ番組を持っているが、その番組のスポンサーに対して、広告営業で説明できるのは、エリアに存在する世帯数や番組で想定されるリスナー像くらいだ。広告はどんな人に届くのかがわかるほうが広告を出稿しやすいのは言わずもがなだが、ラジオ広告はそのターゲットがかなりあいまいなまま販売されている。

それに対してデジタル音声広告は、かなり精度の高いターゲティング広告が可能だ。たとえばオトナルでは、音声メディアSpotifyへの音声広告出稿の場合、Spotify側が持つデータを基に、性別や年齢、位置情報のほか、どんな音楽ジャンルを聞いているか、どんなプレイリストを作っているかによって、ターゲット属性を絞り、音声広告を流すことができるという。

たとえば、Spotifyでクラシック音楽を聞いている人に対して、クラシックコンサートのチケット販売の広告を流すという形だ。このようにターゲットが絞られた広告なら、その効果はかなり高いと想像できるだろう。

音声広告によるブランド認知度はディスプレイ広告の4.4倍

ラジオ広告はターゲットがあいまいなうえに、広告に対する反応を取ることもできない。一方、デジタル音声広告の場合は、ネット広告のようにクリックで反応が取れるということはないものの、位置情報から反応を取ることも可能だ。

たとえば、あるファストフード店が店から1キロ圏内にあるスマホで音声メディアを使っている人に、クーポン付きのデジタル音声広告を打つ。その後、その音声広告を聞いたスマホの位置情報によって、その人がファストフード店に行ったかデータで検証することもできるわけだ。

デジタル音声広告は、バナーなどのディスプレイ広告と比べても、広告効果が大きいというデータもある。音声広告会社MIDROLLが市場調査会社ニールセンと行った調査によると、ディスプレイ広告よりも音声広告のほうが、ブランド想起が4.4倍高かったという。同様の結果は、Spotifyとニールセンの調査でも出ている。

確かに瞬時に多くの情報を伝えられるディスプレイ広告よりも、音という情報だけに絞られた音声のほうが伝わりやすい面はあるのだろう。