「サンプルと違う!」ショックで寝込む

「ウィリアム君は技術力もセンスもあるのですが、ある時、サンプルとはステッチラインがまるで違うパスポートケースがいくつもあがってきたんです。驚いて、『どうしたの、これ?』と聞くと、『そっちの方がクールだ(かっこいい)から』」

テーラーに商品の製作を依頼中の河野リエさん 写真=河野リエさん提供

初めての事態にショックを受けて、その日は一日“ふて寝”した河野さん、翌日には「やり直してもらうしかない」と気持ちを切り替え、ウィリアムさんに、「これでは日本のお客さまに売ることはできないので作り直してほしい」と伝えた。

「彼も『ごめん、わかった』と納得してくれました。その時、『サンプル通りのものでないと商品代は支払えない』とも伝えました。それでも彼は、『やらせてくれ』と言ってくれたんです」

ロングスカートを作っているテーラーのチーム 写真=河野リエさん提供

やり直しをしてもらったこと、サンプルと異なる商品には代金は払えないと伝えたこと。どれも、品質に対する要求が高い日本市場を相手にする以上、「ウィリアム君にはプロフェッショナルであってほしいから」と河野さんは語る。

とはいえ、全て日本流を通しているわけではない。例えばケニアでは、納期に関する考え方が厳密ではなく、「明日には」「明日には」と納品が遅れていくのが当たり前。しかしここで、怒って相手を責めたりはしない。

「日本の価値観を押し付けるのではなく、『ケニア流』に合わせてこちらの仕組みを変えています。今は、本当の納期が10日後だとすると、『5日後ね』と、早めの納期を設定して伝えたりします。発注数が多い時は、3個できた段階、5個できた段階など、ひんぱんに出来上がりを確認して、サンプルと同じになっているか検品をするようにしています」

SNSで舞台裏を見せる

2018年に立ち上がったラハケニア。今年度の平均月間売り上げは、初年度の6.5倍に伸びた。決め手は定期的に新商品を出せるようになったこと。顧客の数も5倍くらいに増えており、リピーターも多いという。

シャツワンピースを作るテーラーのマークさん 写真=河野リエさん提供

「お客様は20代、30代の女性がメインで、私と同世代の方が多いです。アフリカに興味を持っている方も一定数いらっしゃいますが、そもそもアフリカのことはほとんど知らなくて、ツイッターやインスタで商品を見て気に入ってくださった方が多い。一番届けたいと思っていた『なかなか一歩が踏み出せない。変わりたい』という思いを持っている方も多いです。最近は私に子どもが生まれて、それをSNSで発信しているので、子育て中のママも増えてきていますね」

シャツを製作中のテーラー、ジョセフさん 写真=河野リエさん提供

ラハケニアの強みは、なんといってもSNS施策だ。ツイッターとインスタグラムを中心に、自分たちの想いや製作過程はもちろん、失敗や葛藤など舞台裏も全てオープンにし、商品の背景に共感し、応援してくれるファンを取り込んでいる。

どんな職人が、何を、どんな場所で作っているかを伝えるために、製作過程の動画もシェア。動画編集の際も、「ここは0.1秒短くしてください」「このテロップはもう0.3秒後に出してください」と、ゼロコンマ単位でこだわっている。