さらに立木を植えて育てて収穫する技能まで損なわれ、山林の作り方がおぼつかなくなる。国土保全の劣化も心配される。
再エネ補助金で、日本の森がダメになる
本来は高い値段のはずの建築用材をエネルギー利用に回していたらお金にならないだろう、と思うかもしれない。しかし山から木を伐り出す仕事に補助金が下り、売る際にはFIT(フィット)をもとにした金額が支払われる。
FITとはFeed-In Tariffの頭文字を取ったもので、エネルギーの固定価格買取制度を意味する。再生可能エネルギーで発電した電力を、電力会社が一定の値段で買い取ることを定めたもので、バイオマス発電から得られる電力も対象となる。日本では電力会社が買い取る費用を、われわれ消費者が「再エネ賦課金」として負担している。
最近、山林所有者になった方が「1年に7000万円の補助金をもらい、伐った木の多くをバイオマスのプラントに運んでいる」と言っていた。A材やB材の売り方も知らず、売り先も持たないようだった。これでは補助金を使った資源の切り売りに近い。
政策に関わる人の中にも、この問題点に気づいている人がいる。
「上(上司・上層部)の頭には、製材業について大規模集約化しかない。しかし中小の製材業が大事だ。あなたの口から言ってくれ」
こう言われたこともある。政策も分かりやすい数値が取れる方に動く傾向があるため、どうしても大規模化を是とする傾向があるのだ。外からの「新しい」事業に傾倒し、昔からの「古い」事業の発展を蔑ろにするのは、日本的であるとも思う。
「新しい」事業は、予算も取りやすい。CLTもバイオマスも、日本林業にとっては外から来た「新しい」事業である。持続性を得ようとするならば、どちらも必要で、共存できるよう制度を工夫することが求められる。
そして、むしろ外からではなく内から、みずから成長する産業に持続的な将来性がある。外からすげ替えたところで、一時を凌いだだけになりかねない。「これまで」の積み重ねを軽視せず、粘り強く明日へと成長させることが重要だ。