GAFAが音声に着目し始めたワケ

【八木】ちなみに特にGAFAなどの大手プラットフォーマーに関して、なぜ音声に着目し始めているかというと、端的に言えばお金になるからだと思います。市場がすごい勢いで成長しているので、参入せざるを得ないという状態というか。その辺の感覚は、日本ではあまりわからないかもしれませんが、グローバルでは「先に取られると負ける」という切迫した空気になっている。それで、いろんなプレイヤーが音声に参入してきているという感じが強いです。

デジタル音声広告を手掛けるオトナル 代表取締役の八木太亮さん。『ボイステック革命 GAFAも狙う新市場争奪戦』より

さかのぼると、ポッドキャストブームがイノベーションのきっかけになったように思います。2014年に、初めてポッドキャストの番組が、放送のピュリッツァー賞と言われているピーボディ賞を受賞したんですが、音声コンテンツの充実を象徴するできごとでした。

2016年にはワイヤレスイヤホンのAirPodsが出てきた。コンテンツとハードウェアが揃ってくると、メディアとして価値が出てきたということで、これまで動画やバナーばかり見ていた広告の人たちが、音声に参入してきたんだと思いますね。

そういえば、ネットフリックスもオーディオコンテンツをやると言っているんですが、あの会社のコンテンツ制作費って年間1.8兆円とかなんですよ。もはや国の予算レベル。

【緒方】ただ、映像と違って、音声はお金を使うほどいいものができるというものでもないと思います。

【八木】確かにそうですね。

【緒方】人を抱える方が強いので、どれだけ魅力ある人を抱えられるかが勝負なんじゃないかと。

【宮坂】今スポティファイも完全にその方向ですよね。人気がある人を抱えている企業を買収していますし。

【八木】オバマ元大統領と専属契約したりしてますね。

家ではスマートスピーカー、外ではワイヤレスイヤホン

【宮坂】僕は、デバイスの視点って重要だと思うんですよね。なんでインスタグラムのようなビジュアルメディアが広がったかというと、当然、スマホにカメラがついていたからですよね。音声を何で聴くのか、何で話すのか。それはここ数年ですごく進化している。

AirPodsに代表される、左右独立型でワイヤレスの「トゥルーワイヤレスイヤホン」(TWE)も、ここ数年で急速に進化し、普及しました。僕らは2016年に最初のBONXのイヤホンを出したんですが、その当時はほとんどなかった。それが今では、むしろコードがついたイヤホンをしている人の方が少ないんじゃないかっていうくらいに一気に普及した。

スマートスピーカーは今、テック界隈の人は当たり前に使っていますが、一般の家庭はこれからです。今、急速に普及しているというフェーズです。

家ではスマートスピーカー、外ではTWEと、インドアでもアウトドアでも、音声で常時インターネットにアクセスできる環境が生まれた。それが、ボイステックの波が来るうえでの土台になっていると思います。

【八木】僕も同じ意見です。