商品のことを1秒も考えない相手にどう訴える?

商品の特長としてお客様からの評価が高かったのは主に「唐辛子ゼリー」「天然成分」「米びつに入れるだけなので簡単」「お米に臭いがつかない」でした。さらに「虫の悩みから解放される」という安心感があることも再確認できました。

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これらの機能価値と情緒価値までは既存のマーケティング手法で比較的容易に把握できます。しかし、大ヒットさせるための要因はこれらだけでは足りません。さらなる成功の突破口が欲しいとき、私は機能と情緒価値に加えて「心の価値」を加えるように心掛けています。

売り上げを上げなければいけない立場にあるマーケターは、担当商品を起点に考えがちです。しかし、重要なのはお客様が、商品のことを考える時間はほぼなく、あったとしても非常に短いという点です。自分自身について振り返ってみるとすぐ分かります。

皆さんはこの1年間で米唐番についてどれぐらい考えたことがありますか。おそらく1秒もないという人が大半を占めるはずです。例えば、ビール好きの人でさえも朝起きて夜寝るまでに商品名やブランド名のことを考える時間は少ないはずです。

企業が思うほど、自分たちの商品について、お客様が考えてくれているわけではありません。ましてや、米唐番のようなニッチな商品の場合、お客様の頭の中にはほとんど存在していないと言い切れるでしょう。しかし、商品にまつわる生活全般にまで視野を広げると思わぬチャンスに出合えます。

お米は「もったいない」ではなく「申し訳ない」

日常のふとした会話が、発想のヒントになることも少なくありません。米唐番の商品名は一切口にせず、食事や料理のこと、そして普段、お米をどうやって保存しているのかなどをテーマに話を聞きます。といっても、アンケート調査やインタビューのようなことはしません。質問攻めも禁物です。ただ、とりとめもなく、楽しくおしゃべりしながら、女性たちの本音に耳を傾けます。

「冷蔵庫の食材が、気付けば賞味期限切れになっていて失敗したなと思いました」
「あるある! この前、野菜を腐らせてしまって……。もったいないことをしちゃった」
「お米はできるだけ少量で買って、冷蔵庫で保存しています。以前、虫が湧いてしまって、嫌だったんです。なんだか申し訳なくて」

よくよく聞くと、野菜や肉をダメにしてしまったときは「もったいない」、お米に虫がつくのは「申し訳ない」と、無意識のうちに言葉を使い分けているようです。