高級になるほど自動車は多数のAIチップを積み、「搭載チップの数=高性能の証し」とされていましたが、その価値判断は終焉を迎えるかもしれません。テスラでは電装系、運転系、運転支援系の3つしかありません。これはサプライヤーに頼らず、単独で開発を進めているから可能なことであり、結果、統合的な判断や制御が可能となります。

おそらく「すべてをテスラ自身で管理し、コントロール下に置かなければ、テスラの進化スピード、イノベーションについて来れない」という理念があるのでしょう。ここでもテスラは、業界の常識を打ち破っています。

日本人が知らないテスラの野望

日本人の多くはテスラについて、名前だけしか知りません。それはテスラが広告費ゼロの会社だからです。「車が良ければ自然に売れる」というスタンスで、日常的な唯一の広告といえるのは、イーロン・マスクが自ら発信しているツイッターぐらい。なので、関心のない人にはテスラの情報は何も入ってきません。

例えば2021年1月にはモデルSが大幅にリニューアルされ、上位グレードは航続距離837km(アメリカEPA基準)、0-100km/h加速はスーパーカー以上の2.1秒となりました。これも日本ではまったく知られていませんが、自動車にくわしい人ならそのすごさが分かるでしょう。

テスラは運転支援の精度を高めるために、販売した車を用いて情報を収集し、リアルな公道で実証実験を行っています。テスラオーナーであれば、「今後の自動運転のためにデータ提供をしてくれますか」とクルマのモニター上で聞かれたことがあるでしょう。

ドライバーが運転支援機能を使わなくても、テスラ車では裏で常に運転支援機能が「このときにはこういう操作をする」という演算を行っています。そしてその結果と実際のドライバーの運転操作を照合させ、差異をデータとして収集しています。

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そうやって集めたビッグデータをAIにディープラーニングさせて、それに基づいて車のファームウエアをアップデートしていく。その延長線上で、あらゆる環境で使える自動運転を実現させようとしているのです。

バッテリーごと交換できる中国のNIO

中国でも新しいEVの流れが勢いを増しています。

2014年創業の中国の「NIO(ニーオ・蔚来汽車)」は、「中国のテスラ」とも呼ばれる高級志向のEVベンチャーですが、2021年1月に、容量150kWhの電池を搭載し、1000kmもの航続距離を実現するセダンタイプの新型EV「ET7」を発表しています。

NIOは同時に「2022年には開発中の全固体電池を搭載可能とするシステムを展開する」とも発表し、株価が急騰しています。