適性検査をクリアできず

厳密に言えば、そこからもまだ苦悩は続いたそう。たとえばパッケージの印刷段階で、デザインによっては賞味期限のプリントが読みにくい状態で印字されてしまい、第1弾の発売前には、なかなか製造適性検査を通過できないこともあったとのこと。

でもトライアル&エラーを繰り返すうち、「あ、こういうデザインだとうまく印字されないんだな」など傾向が分かってきた。そこからは毎年、春と夏に新たなデザイン(それぞれ16種類ずつ)のボトルを発売できることが、楽しくて仕方がなくなったそうです(18年以降は、毎年4季×各4種類の新パッケージで発売)。

そしてもう一つ、ムーギーの商品開発の醍醐味は、ユーザーと直接触れ合えること。昨今、マーケティングの世界でよく言われる「共創」の視点が、そこにあります。

消費者データをマーケティングに活かす

先の通り、ムーギーは16年2月の発売開始当初、LOHACOという通販サイトでのみ販売されていました。

同サイトは12年、法人向け通販サービスの「アスクル」がヤフーの協力によって個人向けに立ち上げた日用品通販サイト。LOHACOが個人情報を除いた購買データをメーカーに開示してくれる(「LOHACO EC マーケティングラボ」)ため、メーカーと小売りが「共創」でマーケティング戦略を立てられる点も、魅力の一つです。

またムーギーのデザイン担当の女性たちは、自社独自の「共創」にもこだわりました。発売当初から、PR媒体として「インスタグラム」(SNS)を活用し、彼女たちがユーザーと直接やり取りするようになったのです。

ギフトという新たなニーズの発見

16年の発売当初はまだ、インスタ上にキリンビバレッジのブランドアカウントがなかったそうですが、「商品の世界観を表現するために、まさに『暮らしになじむ』ムーギーの姿を、私たち自身で投稿したいと考えました」(寺島さん)

写真提供=キリンビバレッジ
インスタですぐに話題になった。

さっそく「#ムーギー」や「#moogy」などハッシュタグを入れて呟くと、商品を買ったユーザーたちも「ムーギー、飲んでみた」や「今日はどれにしようかな」などと呟くように。やがて、「ボトルがカワイイので、花瓶にしてみました」や、「結婚式のプチギフトにしました」といった呟きも増え、「そうか、ギフトとしても人気が高いんだ」と気づいた、とのこと。

一方、飲み終わったあともしばし、オシャレなボトルを近くに置いておきたい人には、「DIYでちょっと加工してもらって、ペンスタンドやプラントハンガーとしても使えることを、サイト上で提案するようになりました」と寺島さん。併せて、リサイクル啓発も行っているといいます。