「小回り右折」というルールの欠陥
多くの危険性を上げてきたが、中でも筆者がこの小型特殊自動車において最も危惧しているのは、「二段階右折」が禁じられていることだ。
原付乗りからは「面倒くさい」とされるこのルールだが、「小型特殊自動車」である今回の電動キックボードは、車道上においてはむしろ「小回り右折」をしなければならい。
つまり、右折時には車線の右側に寄るか、右折レーンがある場合は、他自動車と同じように車線変更をして右折レーンに入り、そこから右折をせねばならないのである。対向車がものすごいスピードでやってくる中、時速15kmのモビリティが右折したらどうなるかは想像に難くない。
試乗前、SNSで実際に「小回り右折」した利用者がこんな経験談を投稿していたのを発見した。
「さすがに車線が多い道路で小回り右折は怖いと思いながら右折レーンに入り信号待ちをしていたら、交通整理をしていた警察官に『時速15kmしか出ない乗り物で小回り右折は周囲との速度差がありすぎて危ない』と止められた。確かに無理があった」
この投稿を受け、実際電動キックボードで同じ交差点に行ってみたが、時速60kmのクルマが走る中で、3度も車線変更をして右折レーンに向かわねばならず、あまりの危険から筆者は走行を断念した。
この投稿者に当時の話を詳しく聞いたところ、「警察官は2人だったが、うち1人はルールを把握していなかったようで、『原付なので小回りダメ』と注意された。もう1人は知っていたようだが、警察官の方によっても理解がまちまちのようだった」と教えてくれた。
当該4社の一部には、右折時はモビリティを降りて横断歩道を利用することを推奨する社もある。しかし、小回り右折自体が法的に禁じられているわけではないため、大きい交差点ならいざ知らず、比較的小さい交差点の右折のために、わざわざ横断歩道を押し歩く利用者がどのくらいいるのかは謎だ。
「日本と真逆」韓国は規制強化に乗り出した
PRや報道では「海外ではすでに人気の乗り物」とされているが、アメリカのような広大で、自転車文化が根付いている国とは比較にならない。都市部においてもカーブや坂の多い日本と違い、道路が比較的道がまっすぐなうえ、ハイヒールやロングスカートなどでモビリティに乗っている人は皆無だ。
あえて比較をするならば、アメリカでは電動キックボードが出始めたころ、1年間に少なくとも1545件の関連事故が発生したというニュースは見逃すことができない。