家庭進出したパパには、世界が一変して見える
女性の多くは、出産育児を機に、まさに人生が一変します。子育てはママがやるべきという社会からの圧力(そのくせ、サポートはわずか)に直面し、一つ一つ、本当はやりたいと思っていたことを諦めていきます。「しょうがないよね。私は、お母さんなんだから」と、つぶやいて。
一方、男性はどうでしょうか。子どもが生まれても、雇用形態も、労働時間だって基本的には変えないケースが大半です。キャリアアップを諦める人はそう多くはないでしょう。これは、前回の記事でみた通り、やむを得ない部分もあります。だって、社会がそうさせてくれないのだから。
私だって「家事育児は夫婦で5:5です(キリッ)」なんて言ってますが、それができるのは、日本でも有数の子育てに理解のある職場にいるからこそです。夜遅くまで家族のために働いているパパに後ろ指をさして、悪者扱いするなんて、できません。
でも、だからこそ、少なくとも! 私たち男性は、女性たちの置かれている境遇に思いを致し、想像力を働かせないといけないと思います。私は育休とその後の子育てを通じて、ママたちが受けてきた不条理のほんの一端を体験しました。公共交通機関は使いづらくなるし、どんな緊急案件が来ても定時帰りは死守しないといけないし(そして、子どもを寝かしつけてから作業再開)、どういうわけか、重要な会議がある時に限って子どもが熱を出したりして欠席しないといけなくなるし、極め付けには子どもの風邪をうつされるし……‼
こんな状況では、サービス残業が常態化している日本の企業でキャリアを積むなんて、ほとんどミラクル……。
なぜ「女性の意欲の低さ」が問題にされるのか
それなのに! 日本のジェンダーギャップに言及し「女性の役員、管理職が少ない」と言うと「女性の意欲がないから」と言い放つ人は少なくありません。実際、厚生労働省の「平成26年度雇用均等基本調査」によると、従業員30人以上の企業で、女性の活躍を推進するうえで必要な取り組みは何かと問われると「女性のモチベーションや職業意識を高めるための研修機会の付与(38.1%)」が上位にきます。つまり、企業は自社の体制や社会的圧力よりも「女性のモチベーションや職業意識が低いこと」を問題視しているわけです。確かに、女性が男性に比べて役員や管理職を志望する割合が低いことを示すデータはたくさんあります。では、どうして、女性の意欲は低いのでしょう。
私にはわかります。だって、無理なんだもの。
きっちり定時であがって家事育児もガッツリやりながら役員や管理職になっている人は、奇跡のスーパーウーマンなのです。長時間勤務がベースの職場において、子育てを担う人たちは、そうでない人と同じ土俵にすら立てない。私だって、今の家庭環境で、サービス残業上等のオラオラ企業に転職して管理職を目指せるかと問われたら、やっぱり「無理です」と答えます。「意欲がない人」認定されるに違いありません。