「軽やかな半歩」で隠れたニーズを探す

「カクミル」は、従来の商品開発ステップにおいては新製品会議での承認が下りずにお蔵入りとなってしまうところでしたが、市場ニーズが想像以上にあることがわかり、商品化が決まった事例です。この事例があったからこそ、キングジムでは画期的な新商品を作る際には、Makuakeなどの需要調査を必ず挟んでみようという流れが生まれつつあるそうです。

坊垣佳奈『Makuake式「売れる」の新法則』(日本経済新聞出版)

現代においてユーザーの好みは細分化しているため、すべてのニーズを満たすようなアイテムなど、そうそうあり得ないものです。周囲の反応がいまいちだったり、それこそ社長の御眼鏡に適わなかったりしても、欲しがるユーザーというのが一定数いる可能性は高いのです。その一定数が、自分たちが想定しているよりもずっと多く、また潜在的なニーズをすくいとってくれる可能性だってあります。

だからこそ、リスクを減らしてスモール・スタート。意を決した「大きな一歩」ではなく、テストマーケティングを同時に行うことを前提とした「軽やかな半歩」を踏み出すことが大切です。

「幻のプロジェクト」はあっていい

企業の規模にかかわらず、「社内事情」は、どのような会社にもつきまとうものです。良い新商品のアイデアであっても、社内事情のどこかで引っかかってしまう。それが、Makuakeのようにプロトタイプでも出品できる受注生産方式ならば、無駄が起きずに需要調査ができる。中には、目標は達成したけれども、想定より需要がないと判断して、試作品だけで終える「幻のプロジェクト」があってもいいのです。

また、明確な目標を定めたうえで製造ステップを検討したいのであれば、プロジェクトのタイプを「All or Nothing方式」にする方法もあります。Makuakeをはじめとしたクラウドファンディングの仕組みを採用しているサービスであれば、サポーターから資金を得られる方法を複数用意しているのが一般的です。たとえば、Makuakeでは次の2パターンを設けています。

まず、All or Nothing方式は、あらかじめ設定した期間内に目標金額を達成すれば、プロジェクト終了日までに集まった応援購入額を、手数料を除き獲得できます。目標金額に到達しなかった場合、サポーターからの申し込みはキャンセル・全額返金され、リターン(商品)も手数料も発生しません。商品に必要な資金の最低金額が明確なプロジェクトに有効です。

Makuake式「売れる」の新法則』(日本経済新聞出版)より