旅行から帰宅後にすぐ芝刈りをした理由

同調と協調について、もう少しお話しします。

家族と一緒に1週間ぐらい休暇に出て、家に帰って来た時のことです。

1階の窓に何かが貼ってあるのに気付きました。見ると、「芝を刈りなさい」と付箋紙に書いて貼ってあったのです。隣人からのメッセージであることは明らかでした。私は荷ほどきするのもそこそこに、庭の芝を刈りました。

ドイツには中世の建物が多く残っており、街の雰囲気を保つために景観に関してはかなり細かい規制があります。住宅地でも、芝刈りと雪かきについては厳格です。庭には明確な垣根がなく、隣家とつながっていたので、一軒だけ手入れしていないと余計に目立つという事情もありました。そういう時は容赦なく、「芝を刈りなさい」と周囲から言われるのです。

ドイツの冬は大雪が降るので、あっという間に雪が積もります。

正月休みを日本で家族と共に過ごし、戻ってきたら、我が家だけ庭にもガレージにも雪がこんもりと積もっていました。車をガレージに入れるには、まず雪かきをしなければなりません。3~4時間かけて、汗だくになりながら雪かきをしました。

写真=iStock.com/FotoDuets
※写真はイメージです

きっちり自分の敷地だけきれいにする

どこの家も毎日のように雪かきをしているので、朝5時に外から雪かきをする音が聞こえてくると、私も飛び起きて雪かきをし、塩をまきました。いえ、正直に言いますと、大半は妻が汗をかいてくれたのですが……。ドイツには植物を枯らさずに雪を溶かすための塩があり、それをまいておくと雪が固く凍るのを防げるのです。

ここまでドイツ人が雪かきに懸命になる理由は、景観の問題だけではありません。もし歩行者が自分の家の前で雪や氷で滑ってケガをしてしまったら、その家に住む人の責任になるからです。賠償請求されると困るので、みなせっせと早朝から雪かきに励みます。

日本だったら、気を利かせて隣人の家の前も掃き掃除をしますが、きっちりと自分の敷地しかきれいにしないのは、合理的なドイツ人らしいな、と感じました。そこでもアサインメント(割り当てられた仕事)以外はしないという意識が働くのでしょう。

また、自宅で車を洗うときに洗剤を使うのは、土壌が汚染されるので禁止されています。これも環境を大事にするドイツならではのルールです。