ベンツとかヨーロッパの自動車会社ってみんな馬車を作っていたところから出発している。アメリカの自動車会社はフォードみたいに、元は機械工だったとか。どこも在庫を持って、自動車を作っていた。

ところが、紡績工場へ行くと、原綿から綿の糸にするまでは一貫生産で、途中に在庫を持っているわけではない。何もなく流れるように作っていく……。豊田喜一郎という人は紡績工場も織機の工場もよく知っていた。だから、ジャスト・イン・タイムを考えついたのだろうって。ああ、たしかにそうだなって思いました。

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どの企業にも物語がある

そしたらユニクロの柳井さんが、日本の繊維産業は世界一だったから、現場にはものすごく知恵があると言ってました。そして、インドのタタというのも、韓国のサムスンも繊維から始まっている、と。

【小山】でも、面白い本ですよね。小説じゃないかというぐらいおもしろいエピソードがたくさん出てくる。

【野地】もう自由に書いてますよね。それでいいんだなと思いました。

【小山】この後、何かやってみたテーマはあるんですか。このテーマでやりたいとか。

【野地】いちおう次のオリンピックの物語は取材を始めています。それこそまた小山さん、柳井さんの知恵をいただきたいぐらいです。あとトヨタの本出してから、ホンダを書かないかとか、ヤマハやらないかとか(笑)、書店員さんから言われました。

【柳井】でも、それもおもしろいかもしれない。またいろんなエピソードが隠されてるかもしれないし。

日本はサービスで中国に抜かれる

【小山】そうですね。僕は野地さんに中国のサービスマンの話をやってほしいです。

この『トヨタ物語』でトヨタ生産方式のことを読んでいて思ったんですけど、現場の人がどれだけ自分で工夫をするかが大事なんですね。そうしないと会社は成長しない。

先日驚いたのは、中国のいわゆる配達員の人たちが自分のサービス力を競ってるらしいんですよ。例えば、ピザを運ぶ人とかですけれど、その人が届け先に電話して、今からあと何分後に届けます。なので家庭で出したいゴミがあったら、ゴミを準備しといてくださいって言う。ピザの配達なのに、帰りにゴミを持って帰ってくれるサービスを自分で考え付いたと聞きました。すごいですよ。

いま、おもてなしの日本とか、サービス力は日本が強いとかって言っているけれど、僕は中国にすぐ追い越されんじゃないかなと思ってしまう。

【野地】それだ、また本にしましょう。タイトルお願いします。『中国のサービスの達人たち』とか(笑)。

【小山】いやいや(笑)。