アルミを選んだのは「水平リサイクル率」が高いから
無印良品を展開する良品計画によれば、今回アルミに着眼したポイントは水平リサイクル率の高さにあるそうです。リサイクルにもいろいろと種類があるのですが、水平リサイクルとは回収し再利用する際に同じ製品に戻すこと。つまりアルミ缶をリサイクルしてアルミ缶に再生すれば、それが水平リサイクルということです。
ペットボトルもリサイクル率が高い再生可能資源です。ただし、ペットボトルをリサイクルするとポリエステルの綿になります。それはゲームセンターの景品になるぬいぐるみの中綿などに再利用されているのです。それはそれで意義があることですが、「景品のぬいぐるみがすぐに飽きられて捨てられるのであれば、どうなのか?」という問題提起もなされています。
そこでペットボトルでも水平リサイクルの取り組みが始まっています。日本コカ・コーラが「い・ろ・は・す」で100%リサイクルペットボトルを使い始めたのがその例です。ざっくりとした数字で言えば日本の指定ペットボトルの出荷量が年間63万トンほどで、うち7万トン強がペットボトルへと水平リサイクルされるので、単純計算すればペットボトルの水平リサイクル率は12%程度だと計算されます。
リサイクルを徹底すれば、電気代は3分の1になる
これに対してアルミ缶はもともとの電力コストが高いことから、昔から再利用が進んでいます。アルミ缶リサイクル協会によるとアルミ缶は、日本国内のリサイクル率が98%、缶から缶への水平リサイクル率は67%と非常に高いレベルなのです。
中学や高校で習った数列の公式を思い出していただくと計算できるのですが、67%の水平リサイクルを無限に繰り返していくと、最初に1個作ったアルミ缶は最終的に3個生まれることになります。つまりアルミを精錬するのに電気代が銅の10倍かかるといっても、リサイクルを徹底すれば最終的には電気代は3分の1で済むようになる。
こういった実に緻密な連鎖まで考えないと地球温暖化の抑制にはつながりません。近年、異常気象が繰り返され、地球環境がもうすぐ後戻りできないところに到達しそうだと言われています。止めるなら2020年代に世界全体でアクションを起こさなければならない。その前提で企業に求められる持続的な成長への取り組みは非常に重要なものになってきています。まだブランドイメージを高める程度の取り組みしかできていない企業も多い中で、良品計画の発表は非常によい着眼点を突いていると思います。