世界のアルミニウムの40%は中国で生産されている

そしてわたしたち消費者も常に地球環境については情報をアップデートすべきです。ペットボトルに関しても水平リサイクルの取り組みがこれから増えていくはずです。今は12%の水平リサイクル率が50%まで増えれば、1本のペットボトルは最終的に2本分になります。そうなれば使われる石油の量は半分で済む。将来的には日本コカ・コーラにならって、良品計画がアルミ缶からふたたびペットボトルにパッケージを変える日がやってくるかもしれないわけです。

さてアルミ缶のもうひとつ別の話から、菅総理の46%の削減目標へと地球温暖化を巡る話を続けていきましょう。

さきほどアルミニウムの精錬には大量の電力を消費することから日本ではオイルショック以降、アルミの生産工場はほとんどが海外に移転したという話をしました。ではどこの国がアルミニウムを生産しているのかというと、世界の40%は中国で生産されています。

中国・北京の近代的な金融街
写真=iStock.com/Sean Pavone
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その理由は中国が世界的なボーキサイトの原産国だということに加えて、電力料金が国際的に見て安いという理由があります。そしてここで重要なことは、中国はこれまで資源国として化石燃料を豊富にもっていたことから電力が安かったわけですが、そこから今、世界最大の再生エネルギー国家に生まれ変わろうとしていることです。

ゴビ砂漠で進む太陽光発電所の建設

少し前まで、北京は大気汚染がひどく、市民の大半がマスクをして生活をしている様子がたびたびニュースで取り上げられました。しかし最近の北京は違います。中国という国は「大気汚染が問題だ」となると、徹底的に撲滅するため強権を発動します。その結果、北京の大気はここ10年でかなりきれいになりました。新型コロナのワクチン接種も進んでいることから、北京は「マスクのいらない都市」になりつつあります。

中国では広大なゴビ砂漠に大規模な太陽光発電所の建設が進んでいます。太陽光発電というと日本人はコストが高い発電だと思いがちです。しかし、技術革新が進んだことで、現在では火力発電よりも方式によっては安く電力を作ることができるようになりました。

しかも中国は1000kV以上の超高電圧の送電網の建設を始めています。日本の高圧送電網だと電力の輸送ロスが大きいところ、この規模の超高電圧網だとゴビ砂漠から上海まで電力を送っても経済的な電力ロスがとても小さいのです。

そしてアルミ缶についても、これまでのように化石燃料を燃やして作った電力から、太陽光電力で精錬することになれば、ますますエコだという話になるかもしれません。ややこしいとお感じになるかもしれませんが、こうやってSDGsへの取り組みが高まるたびに素材やエネルギー源同士の競争が起きて、前提条件もどんどん新しく変わっていくべきなのです。