ペットボトル廃止と菅首相の発言の「つながり」
「無印良品」が4月23日から全ての飲料の容器をアルミ缶に変えています。ペットボトルを全廃してあえてコストの高いアルミ缶に変えたのです。これに伴い、容量も少なくなりました。たとえば「ノンカフェイン グリーンルイボスティー」なら、ペットボトルでは500ml(100円)だったところが、アルミ缶では375ml(90円)です。結果として、実質的には値上げとなりました。
4月22日、菅義偉総理は世界40カ国が参加した気候変動サミットで、「2030年度の温室効果ガスを2013年度比で46%減らす」という意欲的な目標を打ち出しました。日本はこれまで「26%減」を掲げていましたから、大幅な上積みになります。
このふたつの話は、企業と政府の環境対策という意味で共通します。ただし、その内実は、直感的に考えるよりも、複雑で興味深いものです。ペットボトルがなぜアルミ缶に代わるのか? そしてなぜ温室効果ガスの削減目標が急に大幅に上積みになったのか? その秘密を一緒に考えてみましょう。
アルミの精錬は大量の電力を必要とする
そもそもアルミニウムという素材は電気代の塊だということから話を始めたいと思います。学校で習った方も多いと思いますがアルミは地殻を構成する元素の中で酸素、ケイ素の次にありふれた元素です。にもかかわらずアルミは鉄よりも価格が高い。理由は精錬する際にたくさんの電気代がかかるからです。
アルミの原料である鉱石のボーキサイトはオーストラリアやギニア、ベトナム、中国などで比較的豊富に見つかるのですが、それをアルミにする方法は実用的には電気分解する必要があります。そしてそこで使う電気の量は銅の精錬の10倍もかかります。
このように大量の電気が必要なことからアルミは電気代が安い国でしか精錬ができません。実際、日本はオイルショック以降、ほとんどの工場が閉鎖され、アルミ精錬は海外に依存するように産業構造が変わりました。
さて、地球の温暖化を止める目的で考えると素朴な疑問がわきます。なぜ無印良品は電力を大量消費するアルミを使うのでしょうか。企業と政府が温室効果ガスの削減を追求するうえでまず必要なことは、化石燃料の利用を減らすこと。石油が原料のペットボトルを減らすことはわかりますが、そこで大量の電気を必要とするアルミへと材料を変更する意味はあるのでしょうか?
それが実は「ある」のです。ここが今回の無印良品の取り組みのおもしろいところです。