この「待つ」ということが試される。真に実力のある者は無闇に攻めない。じっと我慢しながらチャンス到来が待てる。故に戦い方としては前半のアウトはパーセーブを旨とし、後半にチャンスが来るのを待つ。前半でリズム良く流れをつかめれば、後半にバーディやイーグルが獲れるホールが続くのだ。

松山の3日目が好例だ。前半はパーをキープして1アンダー。後半一気に攻めて6アンダーとし、首位に立った。しかし、パーキープといえど、オーガスタナショナルでそれを実行するのは容易ではない。

超高速グリーンと至難のピンポジションをどうやって凌ぎきるか。無理な攻めをしなくともボギーは出る。松山はパーをキープするためにボールスピンを操る技術を磨いた。その技術は世界最高と断言できる。

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ドライバーでもスピンコントロール

ゴルフは、ただ真っ直ぐにボールが飛べばいいというものではない。自在に曲げられ、高低差も付けられ、グリーンに弾んでから何バウンドで止まるかまで計算できるショットが必要なのだ。それが即ちスピンコントロールである。これができればあらゆる風に対処できるし、高速グリーンにも、厳しいピンポジションにも対応できる。テニスと同様にゴルフはスピンのゲームなのである。

松山のボールがもしも色分けされていたら、どのような回転がかかっているかわかるだろう。サッカーでも無回転でシュートしたり、カーブを掛けてゴールを狙ったりするように、自在に回転を操ってピンに寄せるのである。

3日目の17番の奥のピンを松山はピンハイに打ってピタッと止めたし、4日目の7番ではグリーンのスロープを使って寄せている。9番ではバックスピンをかけてピンに寄せてバーディを奪った。

それを可能にしたのは松山がオーガスタの複雑な傾斜のライからでも完璧に打てるからだ。ライを見極め傾斜を把握し、ターフを取ってバックスピンをかけたり、逆に取らずに転がしたりする。ピンまでの距離を計算し尽くして打てるのだ。

鉄壁の守りを固め攻める

2日目に姿を消したロリー・マキロイは新しいコーチを迎えて再起を図ったが「平らなライでは上手く打ててもオーガスタは傾斜だらけでミスが出た」と肩を落とした。飛ばし屋のデシャンボーも初日に76を叩いて早くも優勝戦線から脱落したが、「オーガスタは飛ばしても下り傾斜から上り傾斜のグリーンに打ったり、その逆もある。風も吹くし距離感が難しい」と頭を抱えた。

打ち下ろしの10番は左足下がりのライから高いグリーンに打ち上げなければならない。13番は前上がりのライからフェードを打てればイーグルチャンスになる。こうしたことが多々あるオーガスタで松山はミスのないゴルフを展開できたのだ。