セーフティネットとして機能していた側面があった

キャバクラなどの風俗産業は、そうした女性が経済的に誰も頼れなくなったときの、一種のセーフティネットとして機能していた側面があります。母子家庭の母親であっても、とりあえず生活の場を確保しながら、お金を稼いで生きていくことができたわけです。

山田昌弘『新型格差社会』(朝日新書)

実際、日本経済が低迷しているこの20年程で、タテマエ上は身体的な接触がない、キャバクラやガールズバーでアルバイトとして働く学生は珍しくなくなりました。親の収入が低下する中で、少しでも時給の高いバイトを選ばざるを得ない学生が増えているのです。ホストクラブでバイトし学費を支払った、という男子学生も現れてきました。

風俗業で働くことに対する若年層の意識は、昭和と平成では大きな違いがあるのは間違いありません。増え続ける独身男性だけでなく、セックスレスの家庭では夫と妻に愛情面でのコミュニケーションがないため、異性との親密な関係性をそうした店で擬似的に満たす男性も数多く存在します。家族に頼れない女性と、同じく家族がいない、もしくは、家庭に居場所がない男性の需要と供給が、そこでうまくマッチングしていたのです。

「風俗業で働く女性から多数のSOSが届いている」

ところがその状況を一変させたのが、新型コロナウイルスでした。

2020年9月、私が参加する政府の男女行動参画会議DV専門部会に、大都市部の行政官が出席されていました。質疑応答の際、

「大都市部では、夜の街でクラスターが発生したと報道され、接客業で自粛が始まっているようですが、そこで働いていた人たちは今どうしているのですか?」

と訊いたところ、「公的な相談は受けていない」とされつつ、女性を支援するNPOからは風俗業で働く女性から多数のSOSが届いている、という答えが返ってきました。

全国にキャバクラ店は、約5万5000店あります。ホストクラブやキャバクラでの飲食は、客とサービスを提供する側の距離が近いため、飛沫感染がより起きやすいといわれています。そこで働く女性たちは、生活のために感染の危険に怯えながら勤務を続けているわけです。

ところがコロナのクラスター感染が繁華街で複数発生したことで、政府や多くの自治体は、夜の店に対する休業や営業短縮を要請しました。他に頼ることができない多くの女性たちにとって、それは「駆け込み寺」や「セーフティネット」の喪失に他ならず、彼女たちが相当に辛い状況に陥っていることは疑いようもありません。

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