キャバクラや風俗が「駆け込み寺」になっていた

このような事情から、DVの保護施設に入所するのはよほどのことがあった人にとどまっています。DV保護施設の代わりに、以前から被害者の「駆け込み寺」的な場となっていたのが、男性への接客を伴うサービス業です。

キャバクラや風俗業で働けば、普通のアルバイトよりもずっと割のよい報酬が得られ、生活の自由を制限されることもありません。そうした店の中には、独自の寮を備えていたり、保育所と提携しているところもあり、幼い子どもがいる女性でも働きやすいようになっています。職住が確保でき、DV加害者の夫からも守ってくれる、いわば「頼りになる場」だったのです。

東京新宿の夜の街並み
写真=iStock.com/TkKurikawa
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女性がそのようなサービス業に頼らざるを得ない背景には、どのような男性とパートナーになるかという選択によって、女性の人生がかなりの割合で決まってしまう現実があります。男性の場合はいかなる親のもとに生まれようとも、結婚相手がどんな女性であろうとも、働く能力がありさえすれば、お金を稼いで食べていくことが可能です。

配偶者によって人生がまったく変わってしまう

しかし、女性は幼い子どもを育てる期間は長時間働けないことが多いため、配偶者の社会的な立場や稼ぐ能力、そして「性格」によって、自分自身の生活レベルもほぼ決まってしまいます。格差社会の中で「上層」にいる男性と結婚するか、「下層」の男性と結婚するかで、人生がまったく変わってしまうのです。

離婚を選んだ場合も同じです。高収入で資産がある男性と結婚している女性は、夫が離婚を望んだ場合、多額の慰謝料の支払いや財産分与を受けることができます。しかし、収入が少なく資産もない夫の場合は、慰謝料どころか養育費も期待できません。離婚後の養育費が支払われないというケースがよく報道されますが、そもそも養育費を支払う経済的余裕がない男性が増えていることが原因なのです。