「暴力をふるう側への介入」議論は始まったものの…
こうした現状を改善するため、国のほうでも被害者を保護するだけではなく、暴力をふるう側に介入すべきだという議論が始まっています。私たちの部会でも、加害者に適正な形でアプローチしてDVをやめさせたり、加害者を退去させたりする方法を論議しているところですが、具体的な支援が可能になるまではまだしばらくの時間がかかりそうです(男女共同参画会議DV専門部会報告書/2021年参照)。
以前、私がインタビューしたあるDV被害者の女性は、「夫が年老いて寝たきりになったら、とことん思い知らせてやろうと思います」と話していました。いつか必ず復讐してやろうと強い憎しみを抱きながらも、その女性は夫と別れる道は選ぼうとしていませんでした。
DV被害者が施設に入りたがらない切実な理由
これはあまり知られていない事実ですが、日本のほとんどのドメスティック・バイオレンスの保護施設では、逃げてきた被害者が携帯電話を持つことを認めていません。携帯電話のGPS機能で居場所が加害者に知られてしまうことを防ぐため、というのが理由ですが、そんなのは位置情報の機能を切ればよいだけの話です。
今どき携帯がなければ、仕事を探すこともできません。この決まりを改めるように私も働きかけているのですが、「規則ですから」の一点張りでなかなか動いてもらえないのが実情です。恐らく、万が一切り忘れがあったときに、加害者が保護施設を突き止めて乗り込んでくるというような事態の責任問題を恐れているのでしょう。他にも施設の入所者に対して厳しい行動制限があること自体が、「DVの被害者を施設入所から遠ざけている」要因の一つだと考えられます。