腹筋を割るために必要なのは体脂肪を落とすこと
先述したように、私のもとにも「腹筋を割りたいんで、トレーニングのやり方を教えてください」といったことを言ってくる人がいる。そういう人に対しては、私は筋トレではなく、体脂肪を落とすための指導をするようにしている。
当人は「なぜ、筋トレを教えてくれないんだろう?」と不思議そうな顔をしているが、私からすれば「筋トレさえ行なえば腹筋が割れてくる」と何の疑いもなく思い込んでしまっていることのほうが不思議でならないのである。もちろんその後、「なるほど、そういう理由なのか」と納得できる説明を十分に行なうことは言うまでもない。
腹筋運動をやっても、体脂肪が落ちなければ腹筋タテ割れにはつながらない――。その事実を知ったみなさんの中には、「なんだ、じゃあ、おなかにたまっている体脂肪が落ちるくらいに腹筋トレーニングをがんばればいいだけの話じゃないか」と考える人もいらっしゃるかもしれない。
しかし、残念ながら、これも「タテ割れ」にはつながらない。
なぜなら、腹筋トレをがんばったところで、おなかの脂肪は減ってくれないからだ。
ここではっきりお断りしておこう。
腹筋トレーニングをやっても、脂肪は1グラムも落ちない。おなかの出っ張りも1ミリも引っ込みはしない。また、これと同じように、腕立て伏せをやっても二の腕の脂肪は落ちないし、スクワットをやっても下半身の脂肪が落ちることはない。つまり、筋トレの動きによってやせることはないのだ。
筋トレでは脂肪は1グラムも減らない
「そんなバカな! じゃあ、これまでやせようとがんばってきたトレーニングは何だったんだ」と思う人もいるかもしれない。
そういう人々には、非常に残酷な宣告を突きつけるようでたいへん申し訳ないのだが、「筋トレ自体ではやせない」ということは医学的・科学的な事実なのだから仕方ない。
まあ、テレビなどのメディアでは、筋トレをすればスリムになるかのようなイメージが喧伝されているので、筋トレでやせると誤解してしまう人が多いのもやむを得ない。
具体的な例を挙げれば、有名シェイプアップジムのテレビCMを見て、「自分もあんなふうにやせたい」と思う人も少なくないはずだ。だが、あれは基本的に食事制限によってやせているのだ。
多くのシェイプアップジムでは、毎日の食事を徹底的に管理して制限することによって脂肪を落としている。ただ、食事制限だけでやせると筋肉まで落ちてしまうから、そうならないように筋トレをしっかりやりましょうというスタイルをとっている。
つまり、「脂肪を落とせた」「やせられた」という“結果”を出すことができているのはあくまで食事制限のおかげであって、筋トレのおかげではないのである。
だから、「筋トレで腹をへこませよう」という願望を持つのはやめたほうがいい。「汗びっしょりかいてがんばれば、少しくらいは脂肪も減るだろう」と思っている人もいるかもしれないが、そういう希望的な観測も捨てたほうがいい。とにかく、筋トレ自体では脂肪は1グラムも減らないと考えるべきだ。