ボトムアップの改善改良を全社レベルで行えるのがトヨタの強み

自動車産業でもトヨタは本当に特別な存在です。トヨタの強みは特定の人に頼った発明や技術というものがほとんどないことにあります。もちろん有名な経営者やプロジェクトリーダーはいますが、トヨタの一番大切なものは現場から生まれています。現場の働き手たちが集団で努力をして、その結果としてカイゼン、ジャストインタイムという根幹部分が出てきた。

冨山和彦、田原総一朗『新L型経済 コロナ後の日本を立て直す』(角川新書)

営業セクションも同じで、現場ごとの集団改良というのを大切にしていて、足元からはじめていく。それはすごく日本的な集団主義にマッチしています。「冨山が批判してきた日本企業じゃないか」と思われるかもしれませんが、私は非効率な集団主義は悪いと言っているだけで、何が効率的で、何が非効率かは業種、会社により違っています。

そして、何よりトヨタは海外展開もしている企業なので、取締役に女性もいれば、外国人もいます。同質性の高い経営陣ではありません。そこに日本的に集団で改善改良をやっていくということを徹底してきた現場が結びつく。

いずれも私の高校大学の先輩である経営学者の藤本隆宏ふじもとたかひろ先生や新宅純二郎しんたくじゅんじろう先生の有名な研究がありますが、現場起点、ボトムアップの改善改良が本社レベル、全社レベルの変容まで引き起こす力を持っている、ここもトヨタの強みでしょう。

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