労働による貯金だけで老後資金を賄える人はそういない

政治行政に関わってきた経験からまず大きな視点で言うならば、老後に安心できる社会保障の仕組み作りは、政治の責任だと僕は考えている。

だからといって、現行の年金制度をどれだけいじっても安心できる年金額を給付することは難しい。給付額を上げようと思えば、年金料を引き上げるか、税金の投入量を増やさなければならないが、いまの政治の力では、それをやり切ることはまず困難だろう。

このような状況を打破するのは、やはり「投資」だろう。

そして国民の投資を成功させるためには、政治が国の経済成長をしっかりと実現していかなくてはならない。

国としては、付加価値の高い産業を育成し、きちんと儲けられる企業を増やす。個人についても、ただ貯金するのではなく、成長している国内外の有望な業界に投資してリターンを得るという考え方を身につけてもらう。

世の中には、経済成長はもう要らないと言う人たちが少なからずいる。日本の人口減少は不可避として衰退を受け入れ、「平等に貧しくなろう」という「清貧」を説く。そういう人たちはたいてい学者などで、贅沢しなければそれなりに生活が保障されている身分の人であることが多い。

確かに十分に資産を蓄えて逃げ切れる人であれば、国が経済成長せずとも意に介さないだろう。

だが、現役世代、そして未来世代はそういうわけにいかない。

経済成長のない国では、基本的に給料も上がらない。安い給料から貯蓄をしようとしても、いまの銀行に預けたところでマイナス金利の時代に利息はつかない。労働による貯金だけで老後資金を賄える人はそういないだろう。

いっそ半強制的な積立投資の仕組みがあってもよい

お金を儲けられる能力を全員が持っているなんてことはありえない。ビジネスモデルを思いついて起業し、人を雇用して利益を上げるというのはとても難しい。

僕にしてもなんとか弁護士としてそれなりの収入を得ることができたが、多くの雇用を生み出すような企業を作ったわけではない。

お金儲けの得意な人間が企業を経営して利益を出し、ほかの人はその企業に投資してリターンを受け取れればいい。株式会社とはそもそもそういうものだし、利益を出せる企業が増えれば社会は経済成長していく。

21世紀に入って政府も「貯蓄から投資へ」としきりにアピールするようになり、iDeCo(個人型確定拠出年金)や、つみたてNISA(少額投資非課税制度)などの制度も整備されてきた。

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これらは要するに、株式や国債などに対して定額積立投資を行う仕組みだが、掛け金が全額所得控除されたり、運用益が非課税になったりと、一般的な投資に比べて税金が優遇されている。

こうした制度で投資を促すことは良いことだと僕は考えているし、いっそ半強制的な積立投資の仕組みがあってもよいのではないかとも思う。