36年間上院議員を務めてきた政治のプロ
バイデン新大統領は、1942年生まれの78歳、史上最高齢のアメリカ大統領です。弁護士資格があり、29歳より36年間上院議員を務めています。
中道派で議員キャリアが長いうえ、上院の外交委員長や司法委員長を務めた経験から、共和党とも交渉できる「政治のプロ」であり、トランプ氏と違いワシントンの政治手法を熟知しています。また議員時代には、地球温暖化の対処やDV防止法の制定、LGBTQへの差別禁止法であるLGBT平等法(米では一部の州のみにあり)の支持などに取り組んでいます。なかでも地球温暖化問題には、かなり初期から熱心に取り組んでいたため、トランプ氏が離脱したパリ協定には、大統領就任初日に復帰しました。
2009年、オバマ政権が発足すると、副大統領として大統領の実務面を8年間支えました。そして、そこで磨いた政治手腕を武器に2020年の大統領選を戦い、見事アメリカ合衆国第46代大統領の座を勝ち取ったのです。
ちなみに彼を支える副大統領は、カマラ・ハリス。ジャマイカ出身の父とインド出身の母を持つ、アメリカ初の「女性+黒人+アジア系」副大統領です。検察官、カリフォルニア州司法長官、上院議員を歴任してきたこの人は、民主党が求める「多様性の象徴」として期待されています。バイデン政権が今後4年間をうまく乗り切ることができれば、間違いなく「次期大統領」の声も上がってくる人物だと思います。
バイデン氏の政策は「新型コロナ対策」「対中国外交」
さて、それではバイデン大統領が示している政策についても見ていきます。
バイデン大統領が提唱している政策の多くは、とても民主党的です。人種差別の解消、マイノリティや低所得者の救済(かわりに高額所得者には増税)、地球温暖化対策にオバマケアの拡充などからは、トランプ氏の毒で忘れかけていたもう1つのアメリカ、リベラルの息吹(弱者救済・多様性尊重・グローバリズム)を感じます。
ただしバイデン氏の政策には、従来の民主党になかったものが2つあります。1つは「新型コロナ対策」です。ご存知の通り、トランプ氏はコロナを軽く見ていたため、「防疫よりも経済優先」に走り、各州にロックダウンの制限緩和などを求めるのも早かった。しかしそのせいで、アメリカは感染者数が世界一になり、トランプ氏自らも感染してしまいました。また、あまりに中国寄りなWHO(世界保健機関)を批判し、2020年7月には脱退しました。一方、バイデン氏の方針は「経済よりもまず防疫」で、連邦職員すべてと公共交通機関の利用者にマスク着用を義務づけました。さらにはWHOにも復帰し、今後は検査・予防・治療の無料化をめざすそうです。