着ているだけでサイトの宣伝ができる

けれど、うっかり多めに作ってしまい、マルシェが終わってもまだ袖を通していないTシャツが30枚近く余る事態に。1枚作るのに1000円かかっていたため、このままでは3万円が無駄になってしまいます。まだ走り出したばかりのスタートアップ企業にとって、1円の重みは相当なものです。3万円あれば、どんなことができるか……。途方に暮れたわたしは、閃きました。「これ、毎日着たらいいんじゃない?」と。

お金を無駄にしたくないから、という想いで着始めてみたところ、これが想像以上の効果をもたらしました。すれ違いざまに「食べチョクってなんだろう?」という囁きが聞こえてきたり、実際に「どんな会社なんですか?」と話しかけられたり……。着ているだけで「食べチョク」の宣伝ができる。しかも毎日、どんな場所でも。それを考えると、3万円という金額は宣伝費として格安です。

官僚と会う場もいつものスタイルで出席

そうやって「食べチョクTシャツ」を着始めて、もう丸3年が経ちました。その間、KDDI ∞ Labo主催の「MUGENLABO DAY 2019」や「マイナビ農業 アワード2019」などで表彰される機会もありましたが、もちろん、そういった場にも「食べチョクTシャツ」を着て出席しています。どうしてもTシャツ姿がNGのとき以外は、欠かせないスタイルになりました。

Tシャツ姿の秋元さん(写真提供=KADOKAWA)

農林水産省の事務次官が出席される会にご招待いただいたときはギリギリまで悩みましたが、思い切って「食べチョクTシャツ」で出席することに。すると、事務次官からは「いつものスタイルで来てくださって、うれしいです。ありがとうございます」と喜んでいただけました。ビシッとしたスーツ姿のおじさまたちのなかに、Tシャツ姿のわたしが座っている画はとても奇妙だったと思いますが……。

ちなみにこのTシャツを試しに販売してみたところ、意外と売れることにも驚きました。いまではそれを着て宣伝に協力してくださる生産者さんも増えましたし、一般の方が着ているところを見かけることもあります。思いもよらぬ波及効果に、自分でもびっくりしています。