思い上がりが強く、同じ現場に呼んでもらえなかった日々

ただその上で大切なのは、「場を読むだけ」「相手の戦闘力を測るだけ」で終わりではないということ。戦い方を変えることにつなげなければ意味がありません。

寺田有希『対峙力 誰にでも堂々と振る舞えるコミュニケーション術』(クロスメディアパブリッシング)

というのも、過去の私は事務所が敷いてくれたレールがあるから仕事がもらえていたことに気づかず、「自分の素質を活かせば活躍できるはず」と思い上がっていて。だから、「この場ではAの役割を求められているな」と気づいても、「自分はBでいたい」とか「Bのほうが正しい」と思ったらBを貫くようにしていました。「私は私であること」が正義だと思っていたし、それを貫かなければいけないと勘違いしていたんです。

それで思うように評価されなくても、「この仕事は私に合わなかっただけ」と考えてしまっていました。ただ相手が求める仕事ができていなかっただけなのに。

その場で求められていることをしていないわけだから、当然、同じ現場に繰り返し呼ばれるようなことはほぼありませんでした。

仕事を失って痛感した、大切なこと

それでも私は、「仕事って、結局は来るでしょ?」と思っていました。仕事をとってきてくれていた事務所から離れたときにはじめて、「仕事ってなくなるんだ」と気づいたんです。「これまでの芸能生活で、私は何をしていたんだろう……」とものすごく反省しました。

「求められている役割を果たさないといけないんだ」と痛感した私は、まずは「その場で求められていることを見極め、注力すること」を心がけるようになりました。そのために、「場を読む作業」と「相手を知る作業」は欠かせないと気づいたんです。

そして、その場その場で求められることに対して、自分だったらどんな力を発揮できるか考えながら対応していったら、クライアントやスタッフさんから「また声をかけるね」と言ってもらえることが増え、継続してお仕事をもらえるようになった。

「その場限りの仕事じゃなくて、次につながる仕事をしなきゃいけない」とはよく言いますが、そのことを身をもって知ったんです。

現場に入ったら場を読み、相手の戦闘力を判定して、戦い方を変えていくこと。すると、その場その場で最適なパフォーマンスが出せるようになります。そして、自然と次の仕事につながっていくんです。

身近なコミュニケーションの場から、ぜひ試してみてください。大丈夫。トライ・アンド・エラーを繰り返していくうちに、だんだん精度が上がっていきますよ。

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