人を上手に説得できる人はどんな話法を使っているのか。コミュニケーションストラテジストの岡本純子氏は「世界の政治家や企業のトップの優れたスピーチ、通販番組司会者の名セールストーク、多くの小銭を集めるホームレスの訴えなどには、人の心に刺さる3つのロードマップ話法がある」という——。

※本稿は、岡本純子『世界最高の話し方』(東洋経済新報社)の一部を再編集したものです。

手に入れたアイテム
写真=iStock.com/Discha-AS
※写真はイメージです

プレゼンテーションやスピーチをして人を説得するべく、「結論→中身→結論」のハンバーガーの「中身」をつくるときには、次の3つの「ロードマップ」、すなわち(1)「なぜなら」ロードマップ、(2)「3つあります」ロードマップ、(3)「あなたの悩み解消します」ロードマップを活用するのを私はおすすめしています。

聞き手を迷子にしない3つのロジックロードマップ

【①「なぜなら」ロードマップ編】

「結論→理由→事例→結論」の順番で話そう。
「なぜなら」をつけるだけで、説得力は倍増します

ひとつめが「なぜなら」ロードマップ。

「中身」の部分を「理由→事例」と分けて、「結論→理由→事例→結論」の順番で説明していくという話し方です。たとえば、「コミュ力で年収2倍」という結論の話は、次のようになります。

結論
コミュ力であなたの年収は倍増します!
中身
[理由]なぜなら、コミュ力とは、人脈力、問題解決力、決断力など、ビジネスの成功に必要なすべての力を授けてくれるからです。
[事例]たとえば、人脈力。ともに支え合う仲間、つながりはあなたのビジネスの礎になるでしょう。伝説の投資家、ウォーレン・バフェットはこう言っています。
「コミュ力を磨けば、あなたの生涯価値は1.5倍になる」
結論
コミュ力はあなたの年収を2倍、いえ、100倍に増やす力なのです。

こうした話し方は、英語では、「Point-Reason(理由)-Example(事例)-Point」もしくは「Point-Evidence(根拠)-Explain(説明)-Link(結論にリンクする)」を略して「PREP、PEELフレームワーク」などと形容されます。

とりあえず「なぜなら」「なので」を添える。それだけでも効果絶大!

じつは、言いたいことに「なぜならば」をくっつければ、どんな話でも意外と説得力をもたせられてしまうものなのです。

ハーバード大学のエレン・ランガー心理学教授が行った面白い実験があります。

3通りの言い方で「先に5枚コピーをとらせてほしい」と伝え、どの言い方が最も効果的だったかを検証しました。

①「すみません、5枚なのですが、先にコピーをとらせてください」
②「すみません、5枚なのですが、急いでいるので先にコピーをとらせてください」
③「すみません、5枚なのですが、コピーをとらなければいけないので、先にコピーをとらせてください」

コピーを先にとらせてもらえた確率は「①は60%」「②は94%」「③は93%」でした。

「急いでいるので」と「理由」を説明すると、格段に確率が上がるということですね。

でも③をよく見てください。

「コピーをとらなければいけないので」は、まっとうな理由になっていません。

でも、「because(なぜなら)」が入っているため、②と同等の効果を発揮したのです。

「お小遣いを上げて」「ちょっと手伝って」「この商品はおすすめです」……。どんな主張にも、とりあえず、「なぜなら」「なので」を添えてみましょう。それだけで説得力が劇的に上がりますよ!