東大の学生の親の6割は世帯年収950万円以上
さらにもうひとつ。親の年収について、前掲の文科省のデータ以上にシビアな調査結果を紹介しよう。
東京大学では、昭和25年から「学生生活実態調査」を実施している(東大紛争のあった昭和43年を除く)。この調査では、東大生の親の職業や世帯年収が公表されており、最新版では「父」の職業は、多い順に「管理的職業」42.3%、「専門的、技術的職業」23.0%、「教育的職業」8.1%となっている。
一方、母の職業は「無職」34.2%、「事務」19.8%、「教育的職業」8.1%と、昨今の共働き世帯の割合が7割近い状況を踏まえると、専業主婦がかなり多い点は興味深い。
そして、世帯年収については、950万円以上の割合が6割を超える。その内訳は、「950万円以上1050万円未満」21.3%、「1050万円以上1250万円未満」11.2%、「1250万円以上1550万円未満」12.2%、「1550万円以上」16.1%でとなっており、前回調査と比較すると、「1550万円以上」が若干増えている形だ。
この結果を見る限り、子供に対して、高収入な父親は「お金」、無職の母親は「時間」をかけてこそ、わが子を東大に進学させることができると言えるかもしれない。
低年収&低学歴の親も子どもの教育を諦める必要はない
では、年収も学歴も低い親は、子どもの教育を諦めるしかないのだろうか。
前掲の「学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究」では、その点についても考察している。実はSESが低くても、その不利な環境を克服し、高い学力を有する子供は一定数存在するのだ。
ただ、SESが高い子どもに比べて、学力のばらつきが大きいという特徴がある。同調査では、例として、以下のような家庭環境や保護者の行動、意識の在り方にあてはまる子どもの学力が高いという傾向を指摘している。
「子供が決まった起きる時刻に起きるよう(起こすよう)にしている」
「毎日子供に朝食を食べさせている」
「自分でできることは自分でさせている」
「子供のプライバシーを尊重している」
規則性のある生活でメリハリをつける、ケジメをつける。そして、子供の自主性を重んじる。この他にも、同調査では、さまざまな項目が挙げられているが、これらの家庭環境や保護者の行動・意識は、決して特別なものではない。
ただ、ポイントとなるのは、意識して子供に接していることを継続しているという点ではないだろうか。もし、SESが低いのであれば、このような家庭環境づくりを心がけ徹底することで、ばらつきを低減させることは不可能ではないだろう。
いずれにせよ、どんなに高学歴で高年収の親であっても、子どもの教育に無関心であれば、子供の学力や成長が大きく伸びることはない。
母親の学歴が子供の学力に影響が大きいのも、子供と接する時間が長い母親の価値観や成功体験が子供の教育に反映されやすいからであって、遺伝によって学力が担保されるわけではないはずだ。
最終的に言えるのは、親の年収や学歴が高いほうがレベルの高い教育を受けさせられる環境を準備しやすい。その点では子供の学力に良い影響を与えるのは間違いないが、それがすべてと言い切ることはできない。親の学歴や収入がどうあれ、子供の学力を押し上げることは不可能ではないだろう。