「学歴」よりも「自己決定」が幸福度に大きく寄与する
そもそも親が子供に学歴を求めるのは、幸せな人生を送ってほしいという親心からである。もちろん、学歴が高ければ幸福になれるとは限らない。しかし学歴が幸福度を上げる要因のひとつであることは確かだ。
そして、学歴と収入の関係も密接で、学歴が高ければ相対的に年収も高くなる。生きていくためにはお金が必要であり、おおむね年収が高いほうが幸福度も高い。
教育熱心な親が、過度な期待を子どもにかけ、思い通りの結果が出なければ責め立てる、といった「教育虐待」の問題を最近よく目にするようになった。親が子供にできるだけ高い学歴を望むのは、子どものことを思ってこそだが、子供自身も、それを望んでいるのかどうかを見極める冷静さも必要だろう。
ここまでは子供の学力アップに関するエビデンスについて考察したが、最後に、学歴よりも幸福度を上げるものに関する調査ご紹介しよう。
神戸大学の西村和雄特命教授と同志社大学経済学研究科の八木匡教授が、全国の20歳以上70歳未満の男女を対象に行った「生活環境と幸福感に関するインターネット調査」(2018年2月8日~2018年2月13日)である。
この調査では、所得・学歴・自己決定・健康・人間関係の5つについて幸福感と相関するかについて分析を行った。それによると幸福感に与える影響力がもっとも大きかったのが健康だった。次いで、人間関係。その後が自己決定で、所得や学歴はそれらを下回った。所得や学歴が高いことよりも、自己決定した人生であることが幸福度に直結するということだ。
ちなみに、自己決定度を評価するにあたっては、「中学から高校への進学」、「高校から大学への進学」、「初めての就職」について、自分の意思で進学する大学や就職する企業を決めたか否かを尋ねている。
親の敷いたレールではなく、自分自身で選んだ進路なら、努力を厭わない人も多い。達成感や充実感も高くなる上、たとえ、その結果が芳しいものでなかったとしても、選択とその結果が、すべてが自分に帰着すると思えば、責任感は一層増すはずだ。
少子化で、一人の子供にかける親の愛情とお金が高止まりしている状況を目の当たりにしているFPとして、そして一人の親として、「何が何でも東大へ」といった親のエゴや価値観を子供に押しつけるのではなく、子供自身が自分の個性や考えをもとに人生のターニングポイントで取捨選択・決定して進路を決め、親はそれを見守る姿勢こそが重要なのではないかと思う。