入社19年目に管理職へ。取り組んできた「リモートマネジメント」

やがて副主事に昇進したのは2019年。入社19年目で管理職になった。だが、もともと神戸の製薬会社なので本社機能がそちらに集まり、学術情報グループでも東京の支店にいたのは自分一人。部下となる6名は神戸の本社にいるのだという。そうした体制で管理職になるケースは前例がなく、山下さんはまさに手探りの状態で取り組んできたそうだ。

「自分一人だけ東京で離れていると、やはり見えない部分がすごくあります。グループでミーティングすることができず、コミュニケ-ションも取りづらい。当時はまだ電話かメールしかなかったので、何かある度にひたすら電話していましたね」

コロナ禍でようやくリモートが導入され、オンラインツールを用いることで部下の顔を見ながら話したり、皆で意見を言い合えたり、むしろコミュニケーションがとりやすくなったと苦笑する山下さん。とはいえ多くの企業ではテレワークになったことで、部下の様子を掴みにくいと悩む上司が少なくない。山下さんはどう工夫しているのだろう。

「何か困っていても、やはり本人からアクションを起こしてもらわないと気づけないので、何でも相談しやすいような関わり方を心がけています。若い人たちはあまり電話が好きじゃないという声も聞くので、今はチャットと電話の両方を使っていて、本人が楽な形で個別に話すようにしています」

仕事の悩みでは、自分が苦労してきた経験から具体的にアドバイスをする。例えば講演会などは時間配分や話し方のポイントがあるので、事前に発表の練習を提案。一時間の講演会では、どのくらいの枚数があれば時間内に終わることができるか、どうしたら聴く人にとって理解しやすくなるかといった点を踏まえ、話すスピードや話し方などを細かく打合せして、当日の不安を解消するようにした。

また部下自身のモチベーションが下がっていたら、ともに上げていこうと働きかけるような雰囲気作りをしている。

「上から目線で言われると、私もやる気がなくなるタイプなので、部下にはフラットな言葉かけを心がけます。どんなに些細なことでも聞いて、相手の気持ちを受けとめる。私も過去にこんなことがあったからと自分の身に置き換えて理解するようにし、そのうえでどうしたら改善できたのかを伝える。あとは『一緒にがんばっていこう!』という感じですね」

写真提供=ビオフェルミン製薬
2019年3月20日、二子玉川の蔦屋書店で実施したセミナーの様子