誰もが等しく対策できないからこそ、3要素を考えるべき
全員が、同時期、同様に要素①~③を取り除く行動ができることが望ましいが、実際は、それぞれ個人の事情に合わせて、対策を考える必要がある。
ワクチンを打つことができない人は、要素③を取り除くことができない。その代わりに、要素①や要素②を取り除くことを優先して考えることになる。
マスクを付けられない人は、感染リスクの高い環境を避ける、人との距離をとる(要素①)と抵抗力をつけて(要素③)、感染が成立しないように行動を考えることができる。
どれだけの要素をどれだけコントロールできるか一人一人が考えることと、取り除くことができない要素がある場合は、その分、感染リスクが高いことを意識して行動をしていくことが必要である。
「ワクチンを打つことができない」「マスクを付けられない」といった、1つのことだけで他人を責める行為が無意味であることが分かるだろう。
マスクを「正しく」着用することを意識する
米国CDCは、1996年の隔離予防策ガイドラインにおいて、「病原体(要素①)と宿主因子(要素③)はコントロールが困難であるので、微生物やウイルスの移動阻止の感染経路(要素②)に向けられるべきである」として、感染経路を遮断するための有効な手段として防護具の着用の重要性を強調している。
防護具には、マスクも含まれるが、そもそも防護具は、洋服のように単に身につければその効果が発揮できるものではないという前提がある。防護具の着用には繰り返しの訓練が必要である。マスクと呼ばれるもの自体を着用することのみに意識が集中し、マスクの選び方や扱い方とセットで啓発されていない現状に課題があると感じる。
マスクによってウイルスの侵入経路の遮断を行う場合には、マスクのフィルターをウイルス飛沫が通らないことと、顔とマスクの間の隙間の2つの経路をしっかり同時に遮断する必要がある。
マスクは、防ぎたいもので選ぶという原則がある。
防ぎたいものが、固体や液体からなる粉体(ウイルス、細菌、花粉、ダストなど)の場合は、防じんマスク、気体(毒ガス)である場合は、防毒マスクを用いることになっている。
感染対策におけるマスクは、産業現場の粉じん防護と同じ防じんマスクを用いる必要があるが、粉じん防護や花粉症対策では、1粒子もマスク内に入れないという目的のみが重要視される。一方、感染対策では、飛沫粒子に感染力がない場合(要素①)や、体に抵抗力がある場合(要素③)は、経路遮断(要素②)が確実でなくても良い場合がある。
つまり、浮遊しているウイルス飛沫が感染力を持っていない場合、感染力のある飛沫が大きいものに限定される場合、十分にソーシャルディスタンシングが保たれている場合などは、ウレタンマスクや布マスクの着用や、顔とマスクの間に隙間があっても、マスクに関係ないところで、いずれかの要素が取り除かれていることによって感染は成立しないという現状がある。
そのため、現在の感染状況では、一般への防じんマスクの着用は、推奨されにくい。
ドイツのメルケル首相が、公共交通機関での医療用マスク(防じんマスク)の着用を義務付けるというニュースがあった。
そもそも、最初から防じんマスクでしっかりと経路遮断して、感染者数が減れば、医療崩壊も防ぐことができる部分もあるのではと考える。