かつて手掛けていた補助金申請支援事業
今は、女性のキャリア支援事業をメインで手掛けているVIコンサルティングですが、ほんの数年前までは、もう1本の柱がありました。補助金の申請支援です。
「例えば、中小企業が技術開発のための大型の機械など、事業のための投資が必要になったとき、申請すれば国や自治体が補助金を出してくれることがあるんです。夫が起業・経営している福祉・医療ソフトウエアの会社もよく申請するんですが、その申請書類が事業計画書のような形式で、書くのが結構大変。夫の会社では書く余裕のある社員がいなかったので、入社前から私が書いていたんです」
何度か申請を行ううち、郷田さんに補助金申請のノウハウが蓄積されていきました。その時、はたと思いついたのが、「ほかの会社でも、この業務で困っているのでは?」ということ。
「人材が豊富な大企業ならともかく、限られた人数でやっている中小企業では10枚20枚の事業計画書を書くのは大変。パソコンを日常的に使わない業種にとってはワードで書くこと自体が大変です。創業当初に入ってもらった取締役が同様の支援を手掛けていたこともあり、『その書類、書けますよ』というサービスを始めました。実績が出るほどに評判が広まり、『補助金申請支援では福岡でトップクラス』というぐらいに成長したんです」
あっさり手放した高収入の事業
この時のVIコンサルティングのスタッフは、フルタイムの社員一人に非常勤の役員と郷田さん。さらには外注のライターを駆使し、瞬間最大風速で10人ほどのパートタイムスタッフを抱えるほどに。売り上げは数千万円に及んだと言います。
まさに順風満帆といったところですが、郷田さんはこの事業をほかの役員に譲り、自分の会社から切り離しました。
「たくさんのお客さまが何度も利用してくださるのは、私たちのサービスを評価していただいたということなので、とてもうれしいことです。成長したい中小企業のお手伝いもできて貢献できているという実感もありました。ですが、補助金は締め切りがあり、その時期にかなり多忙になるのが体力的にも精神的にもきつく感じてきて……」
しかも、補助金は国の予算に左右され、補助金がなくなれば仕事も終わってしまいます。「組織が小さいうちはいいのですが、事業が成長して組織が大きくなるにつれて、これは何か環境変化があったときに私では支えきれないと思いました。何より同じような事業を毎年していることに新鮮味を感じられなくなってきている自分がいました。このまま続けてはいけないと、当時の取締役が経営している会社に補助金申請支援の事業を移管したんです」