なし崩し的な原発の再稼働にひそかに期待する電力各社

原発の再稼働が進めば、満杯になりつつある使用済み核燃料の処理問題が再燃することになるのは自明の理。それでも、原発が立地する地元自治体が疲弊する中にあって、中間貯蔵施設問題を「棚上げ」したかたちで関電は老朽原発の再稼働にこぎつけた。

こうしたなし崩し的な原発の再稼働にひそかに期待するのは関電だけではない。

「地元は一丸となって柏崎刈羽原発の再稼働に向けて取り組んでいく所存であります」

昨年12月、東京商工会議所の三村昭夫会頭(日本製鉄名誉会長)が、東京電力柏崎刈羽原発を訪問した際に出迎えた新潟県の柏崎市、長岡市、十日町市など地元商工会議所の幹部たちは口々にこう三村氏に訴えた。

柏崎刈羽原発も、7号機は再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査が終了した。日本商工会議所の会頭も務める三村氏の視察は2015年4月以来5年ぶり。柏崎商工会議所が三村氏の来訪を要請して実現した。

同原発で発電する電力は東京をはじめとする首都圏で消費される。そのため「消費地の経済界から再稼働を求める声を上げてもらい再稼働に弾みをつける」(地元商工会議所関係者)との狙いがある。

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東電HDの思惑通り、再稼働は進むのか

三村氏も「首都直下型地震が起きたときの備えとして期待が大きい。(時期は)できるだけ早いほうがいいに決まっている」と答え、再稼働に期待を寄せた。

ところが今、柏崎刈羽原発では、東京電力HDの社員が同僚のIDカードを無断で使って不正に中央制御室に入っていた問題が明らかになったほか、安全対策工事を終えたといったん発表したにもかかわらず、その後消火設備の工事に漏れが見つかり、工事終了の発表を撤回するなど問題が相次いでいる。

東電HDの思惑通り、再稼働は進むのか。原発の立地自治体は、長引くコロナ感染で経済が疲弊しており、再稼働についても背に腹は代えられない状況となっている。

※編集部註:初出時、東北電力・女川原発の稼働状況について誤った記載がありました。当該箇所を削除します。(3月12日13時50分追記)