電力自由化で先行するアメリカでは、400万世帯以上が停電

さらに、この年末年始の電力逼迫も原発再稼働の機運を高めている。ある大手電力の幹部は「自由化を柱にした電力改革はやはり問題が多い」と口にする。

アメリカは今冬、寒波による電力不足に見舞われた。米メディアによると、米東部時間2月16日午前(日本時間16日夜)の時点で400万世帯以上が停電の影響を受けた。石油・天然ガスのパイプラインや精油施設が閉鎖され、原油・ガス価格も上昇。同州南東部のガルベストンでは天然ガスの供給不足や風力発電タービンの凍結により9割以上の世帯への電力供給が止まったのである。

トヨタ自動車は寒波の影響により、テキサス州やケンタッキー州など米国内の4つの完成車工場と1つの部品工場で16日の操業を休止した。ホンダも15日と16日午前にオハイオ州の工場の操業を止めた。計画停電の影響に加え、周辺道路の凍結などで従業員の通勤にも支障が出た。停電で暖房が止まったため、車内で暖を取る家族も続出した。

地元メディアは「誤ったエネルギー政策が招いた停電だ」(米紙ウォール・ストリート・ジャーナル)と社説で州政府を批判。ブルームバーグ通信も想定外の事態を意味する「ブラックスワン停電」だと表現し、安定供給より効率を優先した行政の対応に疑問符をつけた。

太陽光発電などが盛んな九州電力でも電力不足に

テキサス州では2011年にも寒波による停電が発生したが、同州のアボット知事は州内の電力供給の9割を担うテキサス州電気信頼性評議会(ERCOT)が再発防止の対応を怠ったと指摘する。米西海岸のカリフォルニア州でも昨年8月に記録的な熱波による大規模停電が発生したが、今回も当時の教訓を生かすことができなかった。

これに乗ずる形で日本でも「行き過ぎた自由化や、脱炭素の急速な動き」に大手電力を中心に経済産業省資源エネルギー庁、さらには官邸内にも再考を促す動きが出てきた。

現在、電事連の会長企業は九州電力である。温暖な気候から非化石燃料の電源比率は約4割と太陽光発電などの再生エネルギーなども盛んだ。だが、その九州電力でもこの年末年始は電力に事欠いた。

太陽光発電パネル
写真=iStock.com/Umarin Nakamura
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逼迫ひっぱくの度合いが激しかった西日本の大手電力では中国電力の今期の業績が77.8%減の200億円、四国電力は61.1%減の70億円と大幅に落ち込む見通しだ。

北陸電力に至っては86.1%減の20億円と悪化、脱炭素に向けた再エネシフトに充てる資金も事欠く状況だ。