ひと呼吸置いて、感情をニュートラルな状態に

この課題をクリアするために必要な能力は、やや専門的な解説になりますが、相手の発言に対して、自分の中で「自動反応」と呼ばれる微細な感情が生まれたその瞬間を捉え、その感情レベルを能動的に下げる、というものです。

嚙みくだいて言えば、荒っぽい感情をぶつけそうになる衝動を抑えて、ひと呼吸置く能力といえるでしょう。イメージとしては、相手の発言によって生じた自分の中の感情のレベルが、例えば8くらいだったとして、その感情を1とか2のレベルにまで下げて、できるだけニュートラルな感情の状態にする、というものです。

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感情は、怒りであれ喜びであれ悲しみであれ、その感情が生まれてから1時間も2時間も同じ状態が続くわけではありません。感情は刻々と変化していきます。日々の経験を通して、自分の感情の移り変わりを継続的に観察し、感情への理解を深めてください。

あなたは今、何を感じていますか? その感情の強さは10が一番強く、0が一番弱いとすると何点ぐらいですか? そして、それはなぜでしょうか?

能動的に「行動しないこと」も必要

ここで本稿を読み進めるのを一旦止めて、ぜひ私の問いかけに答えてみてください。

このような問いかけを自分の中で継続していくことが、ひとつの訓練になります。

ところで、あなたが「自動反応」しそうになったとき、なぜ反応を先送りした方がいいのでしょうか? その理由は、自動反応を起こしているあなたは、「意思決定をする状態として不適切である」と考えられるからです。

EQを提唱した心理学者ダニエル・ゴールマンの研究によると、私たちは非常にストレスの高い状況にさらされたとき、独自の行動をとる傾向が見られるとされ、熟慮的思考や学習したことに代わり、必ずしも理性的ではなく本能的な反応をするとしています。

つまり、ストレスにさらされた状態では、客観性の高い適切な意思決定ができない可能性が高いので、重要な意思決定は先送りすべきだ、ということを示唆しています。

あなた自身も感情に任せて判断してしまった結果、冷静なときの自分だったら決してしないような言動や選択をしてしまい、後から強く後悔する、という経験はあるのではないでしょうか。こうした事態を避けるため、自動反応している自分にいち早く気づき、自身をより冷静な状態に戻していく努力が必要になるのです。

ビジネスでは、一般に「すぐに行動すること」が最善とされます。しかし、「行動しないこと」も能動的な選択のひとつであることを覚えておきましょう。

自分の感情を冷静に観察し、冷静な選択と意思決定を経て行動に移すことが大切です。