作業のムダがケガを生む
【野地】作業ではなく、運搬の時にモノを落とすとか。
【河合】そうです。不良を出して、不良を後始末しとる時に落としてケガをする。それから機械が故障するでしょう。その異常処置を直している時にケガする……。ほとんどそうなんですよ。標準作業で粛々とサイクルに乗って仕事をしとる時ってケガはないんです。
【野地】いいこと言いますね、もう本は書いちゃったけど(笑)。
【河合】いや、だけど、労働強化ではないと野地さんの本のなかにはっきり書いてある。
【野地】スポーツでもそうですね。ケガするって真剣勝負の時よりも、気を抜いて練習している時に多い。
【河合】だから会社でケガするというのはムダな作業をやってるんだと。大野さんからそう言われたことを僕は鮮明に覚えている。
なるほどなあって。ケガをするやつを見ても、ほとんど、けつまずいたり、すべったり、ぼんやりしたり、横見したり。集中してまっすぐちゃんと歩いてりゃケガしないのに。または、用もないのに、使わんものを置いておいて、そこに足を取られて転ぶとか。
大野さんが在庫をなくせというのは、その在庫に隠れ、危険、ムリ、ムダ、ムラや故障、不良が見えなくなってしまう問題を顕在化させるため。ピンと張った工程なら即ラインストップとなる。大切なのはその問題をその場で解決すること。
【野地】確かにそうですね。
【河合】なぜ、在庫を持ってはいけないのかは、他にも理由がある。ケガを防ぎたいというだけでなく。トヨタ生産方式の心の部分を書いておかないと、そこまではわからない。
単なる表面だけの、かんばんやアンドンの話だけわかっても何の意味もない。なんといっても、トヨタ生産方式は意識改革であり、日々の仕事として現場に定着させることなんです。
「とにかくサボりたくてしょうがなかった」
【野地】河合さんもインタビューでおっしゃっていたけれど、「カイゼンは横着なやつほど思いつく」。トヨタ生産方式が労働強化ではないという証拠みたいなものですね。みんな、楽がしたいからカイゼンをする。
【河合】そうです。
【野地】楽をしたいから、誰もがカイゼンを考えようとする。
【河合】ほんと。入ってすぐの新入社員から定着させないとダメです。管理監督者がいくら能書き垂れても、「楽をするために考えろ」と言う方がみんなやりますよ。
【野地】やっぱり頭のかたい人はあまりカイゼンはしないのですか、河合さんの周りを見ていても。
【河合】いや、頭のかたい人はね、もっと大がかりに金を使ってカイゼンをしようとする。ロボットを入れる、センサーを入れる。自動でやる。大がかりになるだけ。